将来においても資産価値が維持される中古住宅を購入したいなら「立地の選定が重要」だと、前回のブログ記事のまとめでお話ししました。
つまり、将来においても市場価値が維持される立地(ロケーション・エリア)かどうかが重要という内容でした。
そのような立地(ロケーション・エリア)を選定するためには、交通や買い物、病院や学校など、生活関連施設の充実度や利便性はもちろん、地価や家賃の推移、人口の流出・流入などについても調べます。
つまり、その立地(ロケーション・エリア)の経済や人口動態の動向、不動産の地価や賃料、不動産市場の需要と供給のバランスなどについて調査します。
実は、これは「不動産デューデリジェンス」の3つの調査のうちの「経済的調査」にあたります。
今回は「経済的調査」のほかに、土地の選定においてもう一つ重要な、対象物件そのものの土地の調査 = 「土地の状況調査」のお話しです。
「不動産デューデリジェンス」の3つの調査でいうと「物的調査」の「土地の状況調査」にあたります。
「土地の状況調査」とは
「土地の状況調査」とは、「不動産デューデリジェンス」の「物的調査」うちの土地についての調査です。
「不動産デューデリジェンス」の3つの調査
不動産デューデリジェンスでは「物的」「法的」「経済的」の3つの観点から物件調査を実施します。
物的調査
土地の状況調査 ← 今回のお話し
土地の形状、境界、接道状況、電気・ガス・水道の引き込み状況、土壌汚染、地盤状況などを調査します。
建物の状況調査
建物の面積、構造、築年数、内装・外装・躯体・設備の劣化状況、メンテナンス状況、耐震性などを調査します。
法的調査
都市計画法、遵法性(建築基準法・消防法など)、許認可関連書類の有無などを調査します。
経済的調査
地域経済の動向、人口動態などの地域の動向や、地価、賃料、需給バランスなどの不動産の市場性について調査します。
↓下記の関連ページもご覧ください。
「土地の状況調査」では、
- 土地の形状(面積・間口・奥行)
- 境界杭
- 全面道路の種類(公道/私道)や幅員
- 電気・ガス・水道の引き込み状況
- 土壌汚染
- 地盤の強度
などを調査します。
中古住宅では、すでに建物が建っているので、土地の形状(面積・間口・奥行)や境界線、接道状況、電気・ガス・水道の引き込みについては、現地の確認、法務局で入手できる登記簿謄本や測量図、役所での確認などで把握できます。
土壌汚染については、すでに住宅が建っていれば余程問題ないでしょうが、念を入れ調査するなら、用途地域はもちろん、過去の航空写真や登記簿謄本などによる過去の利用履歴、近隣のヒアリングなどで把握します。
現地調査では、土地の水はけの状況や、擁壁がある場合は、擁壁にヒビがないか、傾いたりしていないかなども確認事項になります。
「土地の状況調査」では、自然災害のリスクについての調査は必須です。
自然災害のリスクは、洪水、土砂災害、津波などのリスク、土地(地盤)については地震時のゆれやすさ、地震時の液状化の可能性などです。
地震国の日本では、特に、土地(地盤)の強さのチェックは重要です。
なぜなら、いざ地震が起きた際は、地盤の強さの違いで、その上の建築物の被害状況が変ってしまうからです。
さらに、国土交通省が進めている「立地適正化計画」による立地選定では、『大規模な地震、津波、集中豪雨、土砂災害等の自然災害に備え、災害に強く安全なまち』を目指すことを促しています。
つまり、今後の「立地適正化計画」による居住誘導区域などの選定では、自然災害のリスクが低い場所が優先されると考えられます。
よって、自然災害のリスクがより小さく、地盤がより強固な土地を選ぶことは、従来以上に、将来の資産価値にも直結してくると考えられます。
「自然災害のリスク」「地盤の強さ」の調べ方
自然災害のリスク、地盤の強さは、行政等が提供している各種WEBサイトで調べられます。
具体的には、下記などのWEBサイトで確認できます。
- 都道府県の土砂災害情報マップ
- 国土交通省のハザードマップポータルサイト
- 国土地理院の「土地条件図」
- 国土地理院の「活断層図(都市圏活断層図)」
- 自治体の液状化予想図
- 自治体の大規模盛土造成地マップ
※「土砂災害情報マップ」「液状化予想図」「大規模盛土造成地マップ」は 都道府県名や都市名 とあわせて検索すると出てきます。
ハザードマップでは、土砂災害警戒区域、地すべり防止箇所、急傾斜地崩壊危険箇所、などもチェックされると良いと思います。
住宅購入では、立地が重要ですが、自然災害のリスクも含めた、土地そのものの状況についてもしっかり調べておくことが重要です。
「不動産デューデリジェンス」でいう「土地の状況調査」も重要です。
住宅購入では、住宅の品質だけではなく、地盤や立地条件を含めた周辺環境にも目を向ける必要があります。
以前のブログ記事でも、アメリカやイギリスなどでは、住宅購入前に専門のプロに住宅のデューデリジェンスを依頼し、その結果を見てから住宅の購入を決めるという流れがあることについて記しました。
日本では、建物の調査(インスペクション)を第三者の専門家に依頼すること自体、まだまだ認知されていない状況です。
いわんや「土地の状況調査」をやです。
しかも、日本では「土地の状況調査」してくれる専門家はほとんど見当たりません。(^^;
自己防衛として自身で調査するしかないというのが現状だということを認識しておきましょう。
「土地の状況調査」において、日本の場合は特に、地盤の強さを調べておくことは重要だと思います。
日本は地震国であり、地震が多発する時代になってきている可能性があるからです。
「なぜ新耐震住宅が倒れたか(日経BP社)」などによると、2016年に起きた熊本地震では、耐震等級3レベルでも倒壊した住宅があり、想定される主な要因として「軟弱地盤」が挙げられています。
地震に強い住宅を考える際にも、住宅の耐震性はもちろん、地盤や立地条件を含めた周辺環境にも目を向ける必要があることを再認識させられます。