住宅診断以前の予備知識

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住宅診断以前の予備知識

ここでは住宅診断以前の予備知識として、物件の購入後には変えられない大切なポイントに絞り、
「建物編」「土地(地盤)編」に分けて解説します。

「建物」においては、設備や見た目の仕様は、購入後もなんとか変更できると思いますが、建物の構造的な強さは、購入後では変更が難しいポイントです。

一方の「土地(地盤)」は、地震をはじめとする自然災害が起きるたびに注目され、「土地(地盤)」の性質や成り立ちによって、その被害状況に大きな差が現れることがより広く一般にも認識されるようにもなってきています。

「耐震性、耐火性など災害への強さ」にかかわる『住宅の質』 はより重視されるポイントになってきています。

さらに、そのような『住宅の質』は、今後の中古住宅流通市場において資産価値に直結する要素にもなってくると思われます。

建物編

住宅の構造 ― 
「木造軸組み工法(在来工法)」の耐震性は特に注意

一戸建て住宅については、工法の違いから、大きく下記の5つに分けられます。

  • 木造軸組み(在来工法)
  • ツーバイフォー(木造枠組壁工法)
  • 鉄骨系プレハブ
  • 木質系プレハブ
  • ユニット系プレハブ

プレハブ住宅(※注1)はいわゆるハウスメーカーが建てる住宅ですが、新築一戸て全体でも約20%程度のシェアです。

残りの約80%は木造軸組み工法の住宅です。日本古来の伝統的な工法で「在来工法」とも言われます。

つまり日本のほとんどの一戸建て住宅の構造は「木造軸組み工法(在来工法)」の住宅です。

「木造軸組み工法(在来工法)」は、プレハブ住宅に比べ工業化率が低く、現地などで組み立てられる率が高いので、どうしても出来上がりの品質にバラつきが発生する確率が高くなってしまいます。

特に、耐震性で注意すべきなのは、2階建て以下の「木造軸組み工法(在来工法)」の住宅です。

『4号建築物』と言われ、一般的な木造一戸建て住宅(2階建て以下)が該当します【詳しくは「なぜ住宅診断は必要なのか」】。

『4号建築物』は建築基準法の特例によって、事前申請である建築確認申請時に構造計算書などの書類は不要。しかも完了検査時のチェック項目が大幅に省略されています。

つまり、設計も施工も、第三者のチェックがしっかりなされないまま、購入者に販売されてしまう可能性があるのです。

※(注1)「プレハブ住宅」とは、建築部材をあらかじめ工場で生産、加工することで、建築部材の品質のばらつきを少なくし、現場作業では、職人の技能に左右されることが少なく、工期は大幅に短縮される工業化住宅と呼ばれる工法の住宅です。

一般社団法人プレハブ建築協会
プレハブ住宅の詳細は「一般社団法人プレハブ建築協会」のサイトがわかりやすいです。
プレハブ住宅とは

建築基準法の耐震性 ― 
大地震発生時になんとか人命をまもれる基準

建築基準法という法律に基づいて建てられた住宅だといっても安心できません。

そもそも建築基準法では「建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準(建築基準法第1条)」と定められています。

構造に関して「最低の基準」を定めているだけで、大地震に耐えることは保証されていないのです。

建築基準法の耐震性は、大地震の際に「なんとか人命が助かるギリギリの基準」「被害を受けた建物は使えなくなる可能性のある基準」 ということになります。

住宅の耐震性は「地盤」「基礎」「建物」が理想的な状態で揃ってはじめて設計通りの耐震性を発揮するはずです。

しかし現実は、「地盤」「基礎」「建物」がすべて理想的な状態で揃うことはなかなか困難です。

例えば、過去の震災被害の検証では、建築基準法上はOKでも、「設計上のバランスが悪いプラン」やオーバーハングやベランダの設計荷重配慮ミス、基準法に具体的な規定のない太陽光発電システムなどの追加設置のため、地震時に倒壊したと想定されているケースもあります。

これらは『設計段階での配慮不足』といえます。

また、欠陥住宅などでは、設計上は特に問題がなくても 『施工段階でのミスや不具合』 が原因のことが多いものです。

つまり住宅は 『設計段階での配慮不足』 が原因で標準的な耐震性を確保できていない場合もあるし、 『施工段階でのミスや不具合』 が原因で「設計どおりに完成していない」可能性もあり得ます。

そうだとすれば、一般的な感覚では、最初から少し余裕をみた耐震性能を確保できる基準にしておいたほうが良いはずです。

しかし現実は構造に関して「最低の基準」です。ならば、購入者のリスクヘッジの手段としては、耐震性能は少し余裕のある仕様にしておいたほうが良いということになります。

建築基準法の耐震性にかかわる部分は、過去の大きな地震のたびに、強化されてきています。

特に覚えておきたい年代は下記です。

直近の建築基準法改正の時期と概要
1981年5月以前:旧耐震基準 ― 震度5程度の地震に耐える(震度6以上は想定外)
1981年6月:新耐震基準 ― 震度6強以上の地震で倒れない。建物がこわれても最低限「建物内の人命を確保する」ことが目標
2000年6月:2000年基準 ― 木造住宅の耐震性を強化(1995年の阪神淡路大震災の反省点が盛り込まれた)
2007年6月:マンションなど鉄筋コンクリート造の耐震性を強化(2005年の構造計算書偽装問題の反省点が盛り込まれた)

住宅性能表示制度の耐震等級 ― 
住宅の性能がわかる客観的な指標

住宅性能表示制度は2000年10月からスタート(中古住宅は2002年12月から)した「良質な住宅」かどうかをチェックする第三者評価の制度です。

「地震に対する強さ」をはじめ、「火災に対する安全性」「柱や土台などの耐久性」「省エネルギー対策」「配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)」など、新築住宅では10分野、中古住宅では9分野について、 住まいの性能を等級や数値で表示する制度です。

国土交通省の認定を受けた「指定住宅性能評価機関」によってチェックされ、評価結果は、現況検査・評価書(住宅品確法上の建設住宅性能評価書に該当します)に示されます。

評価員は、不動産売買やリフォーム工事の当事者ではない第三者なので、客観的な評価であることも安心です。

例えば、新築なら、しっかりした設計プランになっているか、その設計プランに基づきしっかり施工されているかと、「設計段階のチェック」と「建設工事・完成段階のチェック」の2段階にわけてチェックされます。

現場での検査も、3階建て以下の住宅では4回のチェック、4階建て以上の住宅では5回以上のチェックがあるので、建築基準法の中間検査より安心です。

住宅性能表示制度で特に注目したいのが『耐震等級』です。

『耐震等級』は地震に強い建物かどうかの指標です。地震に対する建物の損傷や崩壊のしにくさを表示しています。

耐震等級
等級 内容
耐震等級1 建築基準法(2000年基準)と同じ耐震性能
※希に(数十年に一度程度)発生する地震では損傷しないレベル
※極めて希に(数百年に一度程度)発生する地震では倒壊しないレベル
耐震等級2 建築基準法(2000年基準)の1.25倍の耐震性能
耐震等級3 建築基準法(2000年基準)の1.5倍の耐震性能
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/
住宅性能表示制度について | 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/

また、耐震等級によってさらに下記のメリットがあります。

住宅ローン減税制度利用の要件の一つ
耐震等級1以上
その他の税制の優遇
  1. 所得税の特別控除
  2. 登録免許税
  3. 不動産取得税
  4. 固定資産税
住宅金融支援機構の住宅ローン優遇金利
フラット35の優遇金利「フラット35S」の要件の一つ
地震保険料の割引
例えば、耐震等級3なら▲50%(保険始期:2014年7月1日以降)

土地(地盤)編

地盤の種類 ― 
建築基準法でも地盤の強さを3段階に分けています

何事も、基礎が大切だと言われます。元々は建築用語としての基礎が語源ではないかと思います。

一般的に、軟弱な地盤ほど地震の揺れが増幅されますので、住宅の耐震性を高めるには、「地盤」「基礎」「建物」それぞれへの配慮が必要です。

大地震に耐え得る住宅を考えるとき、理想的には「かたい地盤」「建物の加重を分散させる強い基礎」「耐震性の高い構造の住宅」の3が揃うことです。

たとえ「耐震性の高い構造の住宅」を建てたとしても、地盤が軟弱では、安心できません。

住宅の耐震性を確保するためには、地盤の強さは、建物の強さとは別にチェックしておく需要なポイントです。

繰り返しますが、軟弱な地盤では、地震の揺れが増幅されるし、数年かけて徐々に建物が沈下してしまう「不同沈下」が起こりやすいのも、地盤が原因となるからです。

例えば、住宅瑕疵担保責任保険協会「住宅かし保険」を掛けていたとしても、地震などによる自然災害によって「土地が沈下」したり「土地が軟弱化」した結果、建物に不具合が生じた場合には、建物の瑕疵とは認められず、保険の対象にはなりません。

「住宅の耐震性」より先に「地盤の強さ」が重要だとも言えるでしょう。

ところが、地盤調査・調査結果については、業者側から主体的に教えてもらえないケースもある(注1)ようなので、購入者側から積極的に確認をするようにするのをおすすめします。

(注1)「事前に地盤の強さを知りたい」は9割超、地盤改良の際は「品質」が最優先
  • マイホーム建築済・建築中の過半数が「地盤調査・調査結果について住宅会社から説明なし」
  • 地盤改良が必要な場合に優先したいものは「品質」が6割超
「事前に地盤の強さを知りたい」は9割超、地盤改良の際は「品質」が最優先【不動産ジャパン】

一般的に注意すべき地盤の状況やなりたちの主なものは下記の5つです。

一般的に注意すべき地盤
名称 状況やなりたち
軟弱地盤 沖積層の厚さが30m以上の土地。洪積層の上に川や海のよって土砂が堆積してできた新しい地盤。三角州、溺れ谷埋積地、潟湖跡地、堤間低地、せき止め沼沢地跡、後背湿地、旧河道、丘陵・台地間の谷底低地など。
埋め立て
られた
土地
谷や窪んだ場所を埋め立て人工的に造成された土地。
造成地の
盛土
傾斜地の造成では、傾斜を平にするため、元の土地を削って造成した場所(切土)と元の土地の上に土を盛って造成した場所(盛土)ができます。注意すべきは「盛土」の場所と、「切土」「盛土」が混在している場所。
傾斜の強い
土地
後背に山がある場合や、傾斜がもともと強い土地。
不安定な
擁壁のある
土地
擁壁がある土地はもともと傾斜地ですが、強度や構造が規定の設計基準に合っていない擁壁のある土地。擁壁に鉄筋が入っておらず十分な強度を確保できていない場合は注意が必要です。
【参考】危険な擁壁の注意点は?|日経アーキテクチュア

軟弱地盤については、今村遼平さんの解説をメモしておきます。

軟弱地盤とは
今村センセイの地震タテ横ななめminiの【第四話 危険な土地(軟弱地盤)の見分け方】には、沖積層地盤の代表的な微地形として以下の8つが挙げられています。「おぼれ谷埋積地(海成層)」「三角州(海成層)」「潟湖跡地(海成層)」「せき止め沼沢地跡(陸成層)」「堤間低地(陸成層)」「旧河道(陸成層)」「丘陵・台地間の谷底低地(陸成層)」「後背湿地(陸成層)」。
また、同氏によると「標高6メートル以下の低地部は、縄文時代前期には海面下にあったところで、現在ほとんどが軟弱地盤地帯であり、地震動に対して大変弱い」とのこと。

建築基準法でも地盤の強さを3段階に分けて、最も軟弱な「第3種地盤(非常に悪い地盤)」では、住宅の必要壁量を1.5倍にするのが望ましいと定められています。

つまり、最も軟弱な地盤に住宅を建てる場合は、耐震性を通常の1.5倍にしましょうということです。

2000年にできた「住宅性能表示制度」で言えば耐震等級3(建築基準法の1.5倍)にしましょうということになります。

地盤の種類
地盤の分類 判断基準  
良い・普通の地盤 洪積台地または同等以上の地盤 第1種地盤
設計仕様書のある地盤改良 (ラップル、表層改良、柱状改良)
長期許容地所力50 kNW/m2以上 以上 第2種地盤
下記以外
やや悪い地盤 30mよりも浅い沖積層(軟弱層)
埋め立て地および盛土地で大規模な造成工事(転圧・地盤改良)によるもの(宅地造成等規制法・同施行令に適合するもの)
長期許容地耐力20kN/m2以上、50kN/m2未満
非常に悪い地盤 海・川・池・沼・水田等の埋立地および丘陵地の盛土地で小規模な造成工事によるもので軟弱な地盤 第3種地盤
30mよりも深い沖積層(軟弱層)
(資料:日本建築防災協会発行「木造住宅の耐震診断と補強方法」)

地盤と基礎について、「住宅に関する相談事例を考える バックナンバー 国民生活センター」の下記のPDF資料がわかりやすいのでメモしておきます。

地盤と基礎(その1:地盤とその沈下)[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201306_09.pdf
地盤と基礎(その2:地盤調査と基礎)[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201307_09.pdf
地盤と基礎(その3:地盤と基礎)[PDF]
http://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-201308_09.pdf

さらに、具体的に土地(地盤)の安全性をチェックできる「揺れやすい地盤 朝日新聞デジタル」や「国土交通省ハザードマップ」などをご紹介している「土地の安全性」のページもご覧ください。

地震地域係数 ― 
建築基準法上の標準の耐震性より低い耐震性でもOKというルール

建築基準法上の耐震性の基準は「最低限の基準」だということは、上記で説明したとおりです。

ところが、日本のエリアによって異なる「地震地域係数(注1)」という変数によって、建築基準法上の標準の耐震性より低い耐震性でもOKというルールが存在しています。

最低基準の耐震性より低い耐震性でもOKというルールです。

熊本地震の被害でも「地震地域係数」がなければ建物の損傷を免れたケースもあるのではないかと議論になっています。

地震地域係数
係数 エリア
1.2 静岡(県の条例で独自に規定)
1.0 東京都、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、他
0.9 北海道(一部)、 青森県(一部)、 秋田県、 山形県、 福島県(の一部)、 新潟県、 富山県(一部)、 石川県(の一部)、 鳥取県(一部)、 島根県、 岡山県、 広島県、 徳島県(一部)、 香川県(一部)、 愛媛県、 高知県、 熊本県(一部)、 大分県(一部)、 宮崎県
0.8 山口県、 福岡県、 佐賀県、 長崎県、 熊本県(一部)、 大分県(一部)、 鹿児島県(名瀬市及び大島郡を除く)
0.7 沖縄県

※(注1)「地震地域係数」は、0.7、0.8、0.9、1.0の4段階に分かれていて、地震の起きる確率が高い場所は1.0で、地震の起きる確率が低い場所は1.0未満でもOKという係数。 マンションなどの鉄筋コンクリートの建物や3階建て以上の木造建築物で義務付けられる構造計算をする際、設計上の地震力を地域によって割り引くことができる係数。ただし、ほとんどの2階建て以下の木造住宅(4号建築物)は対象外。

ひとこと

「地震地域係数」は、0.7から1.0の変数で、地域的な地震の起きる確率を元に数値が定められています。地震の起こる確率が高いエリアは1.0、低いエリアではそれ以下の数値です。

とても違和感があるのは、そもそも建築基準法上の耐震性が最低基準であるのに、なぜそれ以下の基準でもOKな場合をあえて法律で認めているのかという点です。

地震の起きる確率が高い場所は標準のままの1.0で、地震の起きる確率が低い場所は1.0未満だという部分。

地震の起きる確率が高い場所は1.0より高い数値に設定するのが普通の感覚のような気がします。

現に静岡県は、南海トラフ巨大地震等に備え、平成29年10月1日から独自に県全域で1.2を義務化。特に、木造(在来工法、枠組壁工法等)の壁量計算においては、必要壁量を1.32倍にしています。(※ 1.32倍とは、県指針に規定する、地震地域係数による倍率(1.2)と、真の耐震性能のばらつきによる倍率(1.1)を乗じたもの。)

本気で「県民の命を守ろう」としている静岡県の姿勢がうかがえます。

昨今は、日本のどこでも地震が起きる前提でさまざまな地震対策をしておく時代。

「地震地域係数」は見直したほうがよいと個人的には思います。

震度6強以上の地震 ― 
「数百年に一度、極めてまれに起きる大地震」が頻発

広い意味で、土地(地盤)に関連するテーマとして、ここでは地震についても少し解説します。

建築基準法の耐震基準の説明では「極めてまれにしか起こらない大地震に対して、建物が倒壊せず人命を保護すること。」となっています。

耐震等級1の説明では「極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力に対して、倒壊、崩壊しないことが目標。倒壊、崩壊しないとは、人命が損なわれなわれるような壊れ方をしないという意味。」となっています。

どちらも、震度6強以上の地震を想定していますが、近年かなりの頻度で、震度6強以上の地震が起きているのが現実です。

熊本地震では、前震で耐えたにもかかわらず本震で倒壊してしまった事例もありました。「極めてまれにしか起こらない大地震」が連発して起きた結果です。

「数百年に一度、極めてまれに起きる大地震」とされる震度6強の地震は、近年こんなに起きています。

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