なぜ住宅診断が必要か

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なぜ住宅診断が必要か

専門家による「住宅診断・建物検査(インスペクション)(注1)」をしてもらおうとすると、建物の大きさや構造にもよりますが、中古住宅の場合で約5~10万円くらいかかります。

果たしてそれだけの投資をする価値があるのでしょうか。

結論から言うとそれだけの価値はあると言えます。

なにも診断せず、新築住宅や中古住宅の購入後になんらかの瑕疵(注2)や不具合が見つかってからお金をかけて直すより、 購入前に住宅診断・建物検査(インスペクション)しておけば、知らずに瑕疵のある物件を購入してしまうリスクが少なくなり安心です。

本来、購入前に売主側で直していただける瑕疵なども発見できる可能性があります。

※(注1) 住宅診断・建物検査(インスペクション)とは
建物検査(インスペクション)【不動産ジャパン】
※(注2) 瑕疵とは
不動産の引き渡しを受ける~不動産基礎知識:買うときに知っておきたいこと【不動産ジャパン】

「建築確認申請の検査」や「性能評価機関の確認(任意)」ではチェックされていない箇所を、実際の生活者視点で診断してもらいます。これらの検査とは視点・内容がことなる、より詳細な住宅診断をすることで、建物の状況についてのセカンドオピニオンを得ることができます。

住宅は、高価で長く使う商品です。

仮に購入後になにか不具合が起きて、その対処・補修に、余分な「エネルギー」「手間」「膨大なお金」を使うことがないように、予防対策として「住宅診断」を実施するのは、意義ある投資だと思います。

また、リフォームやリノベーションをする際にも、事前に「住宅診断」しておけば、「本当に必要な修繕ポイントは何か」「修繕の優先順位はどうしたらよいか」などの知識を事前に得ることができます。

例えば予備知識なくリフォームなどしてしまった結果が、国民生活センターに相談されるリフォームトラブルの原因の一因になっているのかもしれません。

ここでは、住宅診断をしたほうがよい大きな4つの理由をお伝えします。

【理由1】

設計どおり
完成している
保証がない
(新築・中古)

施工現場での施工ミスが放置されている可能性

チェックイメージ

「設計どおりできている保証がない。」と聞いたら、「そんなはずはないだろう」と普通はだれでも驚きます。

でも「設計どおりに完成していないかもしてない」くらいに考えておくほうが良いです。

一戸建ての住宅の建築は、現場での職人の手によって施工される割合が高いので、現場の施工では、見落とし、うっかりミスなどを発生するケースがあります。

悪意でなくても、結果的に不具合や欠陥が見逃されたままの住宅になってしまう可能性はゼロではありません。

住宅の製品としての品質が、現場担当者のスキルにも左右されるのです。施工会社が決算前の時など、建築物件が立て込んで、いろいろなチェックがあまくなる可能性もあります。

いずれにしても、施工段階でミスや不具合が発生する可能性があります。

これは「住宅」という商品の特徴とも言えますので、新築一戸建て・建売住宅・中古住宅いずれにも当てはまります。

また、供給元として、大手住宅メーカー、パワービルダー、住宅FC(フランチャイズチェーン)、住宅VC(ボランタリーチェーン)、中小の住宅会社、地域の工務店や大工さん、設計事務所のいずれにも当てはまります。

建築基準法上のチェックでは不十分の可能性

一方、「もしミスや不具合があっても、完成後の検査でチェックされるだろう。」と言われるかもしれません。

建築基準法上は、建築の際は事前に「建築確認申請」しOKが出たら着工。建築に入り途中の「中間検査」を得て、完成したら「完了検査」。その後、買主に引渡しとなります。

ところが、建築途中の「中間検査」、完成後の「完了検査」では、建物自体が設計どおりの安全性・耐久性・耐震性などを確保しているかのチェックはされていません。

その理由は、「中間検査」「完了検査」でチェックされるのは、主として建築基準法の「集団規定」であって「単体規定」ではないからです。

建築基準法の内容は大きく2つに分けられます
「単体規定」:個々の建物の技術的な基準を規定
「集団規定」:該当の建物が都市計画に沿っているかどうかなど

そもそも「中間検査」「完了検査」として現場を1度確認したくらいでは、専門家と言えども、建物が設計どおりの安全性・耐久性・耐震性などを確保しているかなど確認しようがありません。

よって、中古住宅だけでなく新築住宅でも、また、大手ハウスメーカーの住宅だからと言って、決して安心できないのが現実です。

特に注意が必要なのは、一般的な木造一戸建て住宅(2階建て以下)です。

4号建築物(注1)と言われ、2階建て以下で、延べ面積151坪以下・高さ13m以下・軒の高さ9m以下の木造一戸建て該当します。

4号建築物は建築基準法の4号特例(注2)によって、 建築確認申請時に構造計算書などの書類の提出は不要、中間検査は省略、完了検査時のチェック項目も大幅に省略されています。

構造計算をしなくてよいということにはなりませんが、第三者のチェックがなされず、建物を設計した担当者の配慮しだいになってしまいます。

※(注1)建築基準法6条1項4号で規定する建築物。プレハブ住宅や2×4工法の住宅を除く、ほとんどの、2階建て以下の木造在来工法の戸建て住宅が該当します。
  • 不特定多数の方が利用しない建物
  • 木造の建築物
  • 階数2以下
  • 延べ面積500m2以下
  • 高さ13メートル以下
  • 軒の高さが9メートル以下

※(注2)4号特例:建築確認申請時に構造計算書や壁量計算書などの構造関係の資料の提出をしなくてよい特例。

中古住宅の場合そもそも「検査済証」がない物件の可能性も

本来、建築確認申請した建物の工事が完了したら、建築主事(指定確認検査機関)に届出をして工事完了検査(完了検査)を受けることになっています。

建築主は、工事が完了した日から4日以内に届け出を行い、申請を受理した建築主事は申し出から7日以内に工事完了検査を行います。

工事完了検査がOKとなってはじめて「検査済証」が交付されるのです。

ところが、実際は、新耐震基準がスタートした2000年の段階でも、完了検査率は44%ほどの低い数値(注1) なのです!

この数値は建築物全体なので、4号建築物に限れば、さらに低いことが予想されます。

つまり、プラン通り建てられているかのチェックが、そもそもされていない物件がかなりあるということです。

実際、中古物件では、「検査済証」がない物件はかなりあるのが現実です。

※(注1)資料「検査済証交付件数・完了検査率の推移(国土交通省)」の指定確認検査機関における完了検査率の推移より

【理由2】

経年劣化の状況が
把握されてない
(中古の場合)

経年劣化イメージ

住宅は、大工さんの手によって、一品一品つくられます。

いわゆるハンドメイドの製品、手作りの製品といえます(注1)

住宅は、土地という自然を相手に、その上に構築するので、予測のつかない自然環境に常にさらされます。

しかも、クルマのように数年で買い替える商品ではなく、何10年も使用する製品ともいえます。

それにもかかわらず、経年劣化の状況などを把握できてないまま、住みつづけていることがほとんどです。

何か不具合が発生した時にはじめて対応をするパターンが多いと思います。

例えば、一般に、中古住宅の売買では、建物の経年劣化の状況をだれも把握していないまま、契約が進んでしまうことが多いと思います。

対象物件を仲介で購入する場合、仲介業者さんも、建物の経年劣化の状況などの把握していないことがほとんどです。

なぜこうなっているのか。

それは、クルマのように、定期的に整備・点検する法的な制度がないので、特に一戸建て住宅では、建築後数年経っていても、いろいろな箇所がどうなっているか、把握できていないのがほとんどだからです(注2)(注3)

こういう現状があるので、物件の購入者は自己防衛のためにも、事前に住宅診断をし、経年劣化や不具合・瑕疵(注4)の状況を把握してから購入するのが良いと思います。

さらに、可能であれば、個人向けの『住宅の瑕疵(かし)保険』(注5)も検討されるのをおすすめします。

理由は、新築住宅では「構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分」について、売主が10年の瑕疵担保責任を負うことが義務づけられていますが、中古住宅では義務付けられていないからです。

↓下記の関連ページもご覧ください。

個人向けの『既存住宅売買かし保険』は5つの住宅瑕疵担保責任保険法人(注6)が窓口で、加入に際しては、住宅の基本的な性能について、専門の建築士による検査に合格することが必要です。

「住宅かし保険」や「住宅かし担保履行法」については、一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会(注7)のサイトに説明があります。

※(注1)大手ハウスメーカーによる一戸建て工業化住宅(プレハブ住宅)だと、工業化率約8割を謳うものもあるようです。

※(注2)大手ハウスメーカーによる一戸建ての工業化住宅(プレハブ住宅)だと、建築後の点検・メンテナンス計画が用意されていることがふつうです。

※(注3)マンションも通常は修繕計画が当初からあるので、一戸建てよりは、まだ建築後の点検・メンテナンス計画が用意されているといえます。

※(注4)瑕疵・瑕疵担保(かしたんぽ)責任とは
不動産の引き渡しを受ける~不動産基礎知識:買うときに知っておきたいこと【不動産ジャパン】
※(注5)住宅の瑕疵(かし)保険とは
住宅の瑕疵(かし)保険【不動産ジャパン】
※(注6)住宅瑕疵担保責任保険法人
住宅瑕疵担保責任保険法人は、国土交通大臣が指定した住宅専門の保険会社です。現在、下記の5法人が指定されています。
法人によって「個人向け商品」および「個人間の契約向けの保険」が用意されています。
※(注7)一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会
新築住宅、リフォーム工事、マンション大規模修繕工事、中古住宅(売主が宅建業者の場合・売主が宅建業者以外(個人間の売買)の場合)など、いろいろなケースの保険が用意されています。
【理由3】

瑕疵担保の
保証がない
物件がある
(中古の場合)

「中古一戸建て」「中古マンション」など中古物件では、売主の約2割が宅建業者、約8割は個人です。

つまり多くの中古物件は「売主が個人」です。

売主が宅建業者の場合は「引渡しから2年間」の瑕疵担保の保証がつくことが一般的です。

問題は、中古物件の約8割を占める「売主が個人」の物件です。

個人が売主の場合、瑕疵担保責任は半数以上が「現状有姿(0カ月)」つまり「瑕疵担保責任を負わない」という契約が一般的なのです。

つまり「契約時の物件見たままでお引渡しし、引渡した後、何か不具合が見つかっても売主は責任を負わない」という内容の契約が半数以上なのです。

おおまかに言えば、中古物件×80%×50%=中古物件のうち約4割は、売主の瑕疵担保責任が付いていない物件ということになります。

中古住宅の購入時、契約前に住宅診断をしたほうが良い、大きな理由の一つです。

↓下記の関連ページもご覧ください。

【理由4】

耐震基準は
昔の基準ほど低い
(中古の場合)

耐震性能イメージ

阪神淡路大震災(1995年1月17日)、 新潟県中越沖地震(2007年7月16日)、 東日本大震災(2011年3月11日)、 熊本地震(2016年4月14日)

など、あらためて日本が地震国であること、さらに、地震の活動期に入っていると思い知らされます。

こんな時代に、住宅の性能を考えるときに外せないのが「耐震性」です。

もちろん、建築基準法でも耐震基準は定められています。

しかし、建築基準法で定めらている耐震基準はつねに『最低限の基準』です。

大地震が起きるたびに建築基準法が改正されて耐震基準は強化されています。

つまり住宅の耐震基準は昔の基準ほど低いのです。

年代による耐震基準の違い
年代 内容・基準
2007年
6月以降
マンションなど鉄筋コンクリート造の耐震性を強化(2005年の構造計算書偽装問題の反省点が盛り込まれた)
新耐震基準
(2000年基準)

2000年
6月以降
木造住宅の耐震性を強化(1995年の阪神淡路大震災の反省点が盛り込まれた)。
地耐力に応じた基礎構造が規定された。→ 地盤調査が事実上義務化された。
【壁量】震度6強から7の地震で倒壊しない、震度5強程度の地震で損傷しない壁量
【壁の配置バランス】四分割法もしくは偏心率計算を規定
【接合部】筋かい端部と耐力壁の柱頭・柱脚の規定を明確化
新耐震基準
1981年
6月以降
震度6強以上の地震で倒れない。建物がこわれても最低限「建物内の人命を確保する」ことが目標。
【壁量】震度6強から7の地震で倒壊しない、震度5強程度の地震で損傷しない壁量
【壁の配置バランス・接合部】クギその他の金物を使用と明記など。 ただし、具体的な規定はなし。
旧耐震基準
1981年
5月以前
震度5程度の地震に耐えることが目標(震度6以上は想定外)。
【壁量】震度5程度の地震に耐える壁量
【壁の配置バランス・接合部】クギその他の金物を使用と明記など。 ただし、具体的な規定はなし。
(参考:日経ホームビルダー)
ひとこと

木造住宅においては、地盤調査が事実上義務化されたのが、2000年基準(平成12年6月1日から施行)から。

2000年5月までは、地盤調査せずに建てられている木造住宅が多くあるという事実は個人的には注目せざるを得ません。

1995年に起きた阪神淡路大震災の被害の反省に立ち、地盤の強さが建物の倒壊に大きく影響することが認識された措置として、2000年にようやく地盤調査の義務が法律に盛り込まれたことになります。

仮に軟弱な地盤に、特になんら対処しない基礎をベースに、いくらしっかりした建物を建てたとしても、十分な耐震性が確保されないのは目に見えています。

1981年6月以降の新耐震基準から2000年基準以前の2000年5月までに建てられた木造住宅も、特に耐震性には注意が必要だと思います。

築20年超の新耐震基準住宅のうち約9割が、現行の耐震基準に不適合
中古住宅購入時には「耐震基準適合証明書(注1)」があればローンや税金でもメリットのあります。
しかし、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の調査によると、1981年6月の新耐震基準以降に建てられた木造住宅では、新耐震基準住宅であっても、9割は現在の耐震基準に適合していないので、ほとんどが耐震補強工事が必要となることがわかります。
築20年超の新耐震基準住宅、9割が耐震基準に不適合【不動産ジャパン】
(注1)「耐震基準適合証明書」について
中古住宅購入時に、ローンや税金でもメリットのある「耐震基準適合証明書」についてわかりやすい解説があります。
耐震適合証明書|日本木造住宅耐震補強事業者協同組合

2018年現在の耐震基準でも安心できない

しかし、2018年現在の耐震基準(1981年6月以降の新耐震基準に準ずる)でも、下記の内容を想定したものです。

新耐震基準
中小規模地震(震度5強程度):建物に大きな損傷はなく、その後も住み続けられる
大規模地震(震度6~7強程度):建物は大きな損傷を受けるかもしれないが、なんとか崩れずに人命は守られる。しかしその後は使えなくなるかもしれない

つまり、建築基準法が定める耐震基準のままで新築住宅を建てても、大地震後には使えなくなる場合もあり得ることになります。

大地震が起きたら、命は助かるかもしれないが、住宅という財産を失ってしまします。もし住宅ローンを使って住宅を建てていたら、ローンが残ってしまう可能性があるのです。

つまり、普通の感覚でいうと『それでは困るという基準』が、建築基準法が定めている耐震基準なのです。

でもこれは、そもそも建築基準法が「建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準(建築基準法第1条)」として定められているからです。

2016年4月14日に発生した熊本地震では、2000年基準の住宅でも倒壊してしまった事例がありました(注1)

倒壊の要因は、建築基準法上の耐震基準だけではありませんが、『現在の建築基準法の定める耐震性は、普通の感覚で決して安心できる基準ではない。』ことは認識しておくべきです。

※(注1)「なぜ新耐震住宅が倒れたか」日経ホームビルダー編 日経BP社(2016年8月29日)が参考になります。
「軟弱地盤」「低い直下率」「施工ミス」などが倒壊の原因の一因と考察されています。

↓下記の関連ページもご覧ください。

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