現在の日本では、住宅は量的には余る時代になってきています。
人口減少および高齢化社会もその一因です。
こうなると、現在住んでいる住宅をさらに長く住み続けられるようにしたり、中古住宅をリフォーム前提で購入するというケースが増えてきます。
劣化した住宅内の水回りなどの設備を新しくしたり、住む人のライフスタイルに応じて、住宅をリフォームやリノベーションするニーズはますます増えていくことが予測されます。
例えば、下記のようなリフォームはよくあります。
- 【1】外装や内装を最新の仕様にする
- 【2】お風呂・トイレ・キッチンなど水回りをリフォームする
- 【3】家族のライフステージにあわせて間取りを変更する
ここで、すべてのケースに共通する重要なポイントがあります。それは、
- 建物の構造上主要な部分の安全性が現状どうなっているのか
- リフォームによってその安全性は維持されるのかどうか
をリフォーム前の時点で把握できているかどうかという点です。
これらを把握できていないままに安易にリフォームをしてしまうと、
【1】では、見た目はキレイになっても、柱や床下などが腐食していたりシロアリ被害を受けていたら、その後に不具合が発生するリスクは残されたままです。
【2】では、お風呂とトイレをリフォームしようと、工事費用を見積もりし納得の上、いざ工事を始めたら、お風呂近辺の壁や床下がシロアリ被害を受けていて、当初の見積もり金額ではシロアリ被害の部分のリフォームができないというケースもあります。
【3】では、元の2部屋を1部屋に変更し、動線の良い広いリビングになったとしても、もともと構造的な安全性上、必要だった柱や壁を無くしてしまったら、以前より建物の耐震性が低くなってしまいます。
元の住宅の状態が不明なまま、リフォームやリノベーションを進めてしまうと、無駄な工事や費用が掛かったり、建物の耐久性や安全性がかえって損なわれたりする場合があります。
さらに重要なポイントは、リフォーム(リノベーション)前の住宅の状況把握で「耐震診断」や「インスペクション」を実施する場合は、第三者の専門家に依頼すべきだということです。
リフォーム(リノベーション)の前には元の住宅の劣化状況などを客観的に把握しておく
現状を知る。全体像をつかむ。
これらはリフォームに限らず、何かをより良く変える際のスタート時には必須のプロセスだと思います。
リフォームやリノベーションの対象となる住宅は、長年住んでいる持ち家か、新たに購入した中古住宅かのいずれかだと思います。
いずれにしても、新築ではないので、完成後、何年か経過している物件です。
年数がたっていれば、どうしても経年劣化した箇所がある可能性が高くなります。
理想的には、日常的に住まいの点検がなされてきていれば、建物の性能も維持されますが、現実的には、何か不具合が起こるまで、メンテナンスがされていない場合が多いと思います。
特に、古い住宅や木造住宅の場合では、注意が必要です。
建築された時期によって、耐震性能や耐火性能が現在の基準より低い可能性がありますし、設計から完成に至るプロセスでの現場検査など(建築確認申請、中間検査など)が省略化されている場合もあります。
過去、一度も点検をしたことがない場合はなおさら、リフォーム前のタイミングで住宅診断をしておくことをおすすめします。
より理想的な無駄のないリフォームプランを立てるために、その出発点として、現状の住宅の客観的な劣化状況などについて、リフォーム前に住まい手が把握しておくことが重要です。
例えば、冒頭に挙げた事例【2】では、事前の検査でシロアリ被害を把握できていれば、まずシロアリ被害対策をした考慮で、お風呂とトイレを改修するというリフォームプランを立てられます。
現状の問題点の全体像が把握できていれば、リフォームプランの費用配分や改修工事の優先順位もしっかりした根拠をもとに決められます。
冒頭の事例【1】も同様です。
リフォーム(リノベーション)の前には第三者的立場からの客観的な耐震診断やインスペクションが理想
施主のライフプラン、ニーズに合った、本当に意義のあるリフォームやリノベーションをするためには、リフォームをしようとする住宅の、現状の耐震性や劣化状況などを把握しておくことがリフォームの出発点だと述べました。
そうは言っても、住宅の耐震性や劣化状況などを把握することは、素人の一般の方が自分で実施するのは、現実的には難しいでしょう。
事前に住宅の劣化状況や構造上の安全性などの把握には、やはり専門家にお願いすることになります。
その際、リフォーム(リノベーション)業者とは利害関係のない、金銭的なかかわりのない、第三者的立場のインスペクターに、耐震診断や劣化診断をしてもらうことが重要です。
特に間取りの変更をともなうリフォーム(リノベーション)の場合、できれば、住宅の構造にも詳しい建築士にインスペクションしてもらうことがベストです。
なぜなら、元の住宅について、構造の安全性まで含めた全体的な状況を把握しておきたいからです。
リフォームの際、限られた予算の中で、何をどこまで変えるかは、客観的な診断結果をもとにしないと決めることができないからです。
さらに、可能であれば、誰にリフォームやリノベーションを依頼するにしても、セカンドオピニオンをもらえる第三者的立場の専門家にサポートしてもらうのが理想です。
リフォーム(リノベーション)の依頼先からのプランや提示された仕様・見積もりなどについて、第三者的立場からのアドバイスを参考にしたいからです。
一般的に、「軽微な建設工事」の場合には、施工業者は必ずしも建設業の許可を受けなくてもよいとされています。【※注1】
「軽微な建設工事」とは下記の建設工事のことです。
- 「軽微な建設工事」とは
- 【1】請負総額が税込み1500万円未満の工事または延べ面積が150m2未満の木造住宅工事
(=建築一式工事)
- 【2】請負総額が税込み500万円未満の建築一式工事以外の建設工事
請負総額が税込み500万円未満のリフォーム工事は【2】に該当します。
請負総額が税込み1500万円未満か延べ面積が150m2(約 45.375坪)未満の新築工事や増築工事は【1】に該当します。
建設業の許可を受けていないということは、「許可要件」を備えていることや「欠格要件」に該当しないという保証が無いということになります。【※注2】
たとえば、請負総額が税込み500万円未満のリフォームやリノベーションなら、建築の専門知識があまりない業者でも受注することが可能となります。
間取りを変更するような、本来、建物全体の構造的な安全性という観点からも配慮が必要なリフォームだとしてもです。
リフォーム工事やリノベーション工事をだれに依頼するか【※注3】ということは、リフォームやリノベーションが成功するか失敗するかにも関係してくる重要なポイントで、これは別途慎重に考慮する必要がありますが、それ以前の「リフォーム前の客観的な耐震診断やインスペクション」の必要性を、ここでは強調しておきます。
今回は「リフォーム(リノベーション)前のインスペクションの重要性」について述べました。
中古住宅(既存住宅)の購入時と同様、リフォームやリノベーションの際にも、事前にインスペクションを実施することをおすすめします。
さらに、耐震診断や劣化診断をしてもらうインスペクターは、リフォーム業者とは利害関係のない、金銭的なかかわりのない、第三者的立場であることが重要です。
実は、リフォーム工事でのトラブルは頻繁に起きています。
リフォームの工事範囲や仕様などを事前に明確に取り決めしていなかったり、工事に入ってから想定外の状況が発生したりなど原因はさまざまです。
これらのトラブルをできるだけ回避したり、起きてしまったトラブルを解決するために、下記などでリフォームについての予備知識を得ておくことをおすすめします。
耐震改修のリフォームには、各自治体の補助制度や減税制度なども用意されています。
耐震診断などの結果、耐震補強が必要ならば、水回りなどのリフォームと同時に実施すると、リフォームに要する費用やスケジュールなどの無駄をより少なくできます。