せっかく中古住宅を購入するなら、資産価値も考慮して物件を選びたいものです。
資産価値は何で決まるのでしょうか?
まず、中古住宅は「土地+建物」という認識が重要です。
もちろん建物も重要ですが、購入者としては、建物だけに注目しているわけにはいきません。
資産価値という点では、建物以上に「土地および立地(エリア)」に注目しなければなりません。
特に立地(エリア)については現在の状態はもちろん将来像も考慮する必要があります。
つまり物件を選ぶ際は、物件の周辺エリアを時間軸も考慮し判断する必要があります。
「中古住宅を買う」とは「土地を買うこと」でもある
立地(エリア)が重要なのは、もちろん中古住宅に限りません。
「新築分譲住宅の購入」でも、「新規に土地を購入し建物を新築する」場合でも同じです。
一般に住宅というと建物ですが、住宅購入となると、建物と土地と不可分なので「土地+建物」を買うということです。
「分譲一戸建て住宅を買う」「中古の一戸建て住宅を買う」は、土地を買うことでもあるのです。
あたりまえと言えばその通りなのですが、中古住宅(土地+建物)を買うとは土地を買うことでもあるという事実を、購入者は再度よく認識する必要があります。
建物はもちろん土地にも注目する
建物の現況のチェックだけでなく、土地の現況のチェックも必要です。
中古住宅を買うためには、契約前に建物に不具合がないか、よく確認しなければなりません。
もちろん、給水、排水などの付帯施設の状況のチェックも必要です。
ここまでは、建物のインスペクションで事前に把握しておきます。
一方、土地のチェックはどうでしょうか。
検討している物件の土地そのものの安全性のチェックも必要です。
例えば、擁壁がある場合は、現行の施工基準に合っているか、十分な強度があるかなども、チェックしなければなりません。
高さが2m未満の擁壁では建築基準法上の届け出が不要なので、法令などが求める施工基準に適合していないものも多いのです。
仮に擁壁の強度が弱い場合、大雨や地震で崩れてしまうかもしれません。あるいは、工事をし直す際、現行の施工基準で作ると、とても費用がかかるかもしれません。
地盤の強度はどうでしょうか。軟弱地盤ではないかどうかもチェックしておきたいポイントです。
地盤は自然条件でもともと軟弱な地盤の場合と、造成で埋め立てた場所、盛土の場所も軟弱になっている場合があります。自然条件では軟弱地盤でなくても造成で軟弱になっている場合もあります。
役所や役所のWEBサイトに用意されている「大規模盛土造成地マップ」も確認しておきましょう。
可能であれば地盤調査をしておくと良いです。
また水害のリスクはどうでしょうか。役所や役所のWEBサイトに用意されている、「ハザードマップ」によって、洪水(河川のはん濫による浸水)や内水はん濫(大雨による浸水)による浸水や、地震の際の土地の液状化などの危険性も把握しておきます。
資産価値のカギは立地(エリア)
そして、将来の資産価値も考慮するなら、仮に将来売却する際、売れるかどうか、つまり売却価格が維持できるかどうかが重要です。
資産価値のカギは立地(エリア)です。
仮に建物は全く問題なくても、建築場所が日常生活に不便なら、その物件を買いたい人はごくごく限られるでしょう。
モノの価格は需要と供給のバランスで決まります。住宅も同じです。
そのエリアに住みたいと思う人が多ければ、そのエリアの物件は売れる物件と言えます。つまり資産価値がある物件です。
一方、そのエリアに住みたいと思う人が少なければ、売りにくいあるいは売れません。つまり資産価値が低い物件となってしまうのです。
郊外の中古住宅の購入は特に慎重に
郊外の住宅地はとくに、これからますます資産価値に差が出てきます。
つまり、売買価格が維持できるエリアと、どんどん値下がりしてしまうエリアとに2分化していきます。
すでに「限界集落問題」「空き家問題」さらには「自治体が消滅する可能性」までもが話題となっています。
これらは日本の人口動態に基づく予想ですので、余程イレギュラーなことが起こらない限りこの流れは変わりません。
とくに郊外エリアが「スプロール化(※1)」「スポンジ化(※2)」している日本の現状において、国も対策に乗り出していますが、国の意向、自治体の意向、業界の意向があり、対策の効果が出てくるまでにまだまだ相当な時間がかかると思います。
こういった状況においては、購入者自身が自己防衛として、物件を慎重に選ぶしかありません。
また、特に地方都市によっては「立地適正化計画(※3)」によって居住を促すエリアと指定される「居住誘導区域」についてもチェックが必要になります。
今後、自宅が「居住誘導区域」内に立地しているかどうは、将来、自宅周辺の生活インフラの整備や自宅の資産価値に直結してくる可能性があるからです。
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立地(エリア)をチェックする際の基本中の基本「用途地域」
日本では、都市計画によって建物を建ててもよい場所とそうでない場所が決められています。
建物を建ててもよい場所は「市街化区域」、建物の建築を抑制している場所が「市街化調整区域」です。
建物を建ててもよい場所である「市街化区域」は、大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3つに大別され、さらに利用目的に応じて12種類の「用途地域」が指定されています。
注目すべきは、住宅が「商業系」「工業系」の用途地域にも建っていることです。
なぜなら、工業系の「工業専用地域」以外の11の用途地域すべてに、住宅を建ててよいからです。
例えば、商業系、工業系の用途地域内の住宅を購入した場合、今現在はお隣が住宅でも、将来、そのお隣が商業施設に建て替わる可能性があるのです。
もちろん、商業系、工業系の用途地域内の住宅がダメということは全くありませんが、一般的な住環境としては「住居系」が理想です。
一戸建てならば「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」が理想です。それぞれ下記のように定義されています。
- 第一種低層住居専用地域
- 低層住宅の良好な環境を守るための地域。小規模なお店や事務所を兼ねた住宅、小学校、中学校などはOK。
- 第二種低層住居専用地域
- 主に低層住宅の良好な環境を守るための地域。小学校、中学校のほか、150m2までの一定のお店などはOK。
12種類の「用途地域」と一戸建て住宅の建築可否
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用途地域名 |
一戸建て住宅の建築の可否 |
住居系 |
第一種低層住居専用地域 |
○ |
第二種低層住居専用地域 |
○ |
第一種中高層住居専用地域 |
○ |
第二種中高層住居専用地域 |
○ |
第一種住居地域 |
○ |
第二種住居地域 |
○ |
準住居地域 |
○ |
商業系 |
近隣商業地域 |
○ |
商業地域 |
○ |
工業系 |
準工業地域 |
○ |
工業地域 |
○ |
工業専用地域 |
× |
用途地域は役所のWEBサイトや都市計画課などで閲覧できますし、都市計画図としても販売されています。
エリアが決まっていたら、一度は役所へおもむき、計画道路やその他の建築制限などの都市計画を確認することをおすすめします。
近い将来の都市計画などの貴重な情報が得られることもあります。
ちなみに私自身の住宅購入では、土地を購入後、住宅を建てたのですが、土地を選ぶ段階で、買ってきた都市計画図を広げてチェックしていました。
さらに、WEBサイトで地盤の強度、ハザードマップのチェックはもちろん、航空写真で戦後から現在までの写真で土地の利用状況の変遷もチェックしました。
現在、国は中古住宅市場を活性化させる目的で、購入者の安心を担保するために、インスぺクション(既存住宅状況調査)と瑕疵保険を普及させる政策を進めています。
購入予定の建物インスぺクション(既存住宅状況調査)によって事前に建物の不具合の有無を確認できるのは良いことです。そして、不具合がなければ瑕疵保険を付けられるのも良いことです
でも購入者としては、資産価値を維持できる物件を冷静に選ばなければなりません。
建物だけに注目しているわけにはいきません。
資産価値を維持できる物件を選ぶためには、土地および特に立地(エリア)について、慎重に判断、選択することがカギとなります。
当「住宅診断ナビ」では、「住宅」を単なる建物ではなく「住環境(建物と土地)」および「資産(建物と土地)」と位置づけ、購入者がより良い住宅を手に入れていただくための情報も掲載しています。
住宅購入の際、ぜひ参考にしていただければと思います。