依頼者も知っておきたい「既存住宅インスペクション・ガイドライン」

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依頼者も知っておきたい「既存住宅インスペクション・ガイドライン」

2019/07/04 blog 記事の目次

「住宅診断」「住宅のインスペクション」と呼ばれるサービスが何か、まだよくわからない方は、国土交通省が2013年6月に示した「既存住宅インスペクション・ガイドライン(※)」が参考になります。

元々は、インスペクション事業者向けのガイドラインですが、「住宅診断(インスペクション)」を知りたい、一般の方にも参考になります。

昨今「住宅診断(インスペクション)」を実施する民間事業者のサービス内容は、大半がこの「既存住宅インスペクション・ガイドライン」に準拠しているからです。


ガイドラインの冒頭、「ガイドライン策定の背景・目的」には以下の説明があります。

  • 現場で検査等を行う者の技術力や検査基準等は事業者ごとに様々な状況にある。
  • 検査方法やサービス提供に際しての留意事項等について指針を示すこと。
  • 事業者による適正な業務実施を通じて、既存住宅インスペクションに対する消費者等の信頼の確保と円滑な普及を図ることを目的とする。

つまり日本では、「住宅診断(インスペクション)」を実施する業者や業界も、まだこれから成熟していくべき段階にあるということです。

今回は、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」の概要と、その中で、依頼者が押さえておくべき2つの重要なポイントを、取り上げてみます。

「既存住宅インスペクション・ガイドライン」の趣旨

ガイドラインの基本的な考え方・趣旨として以下の説明があります。

  • ガイドラインは、業務の実施内容として必要十分なものを示すものではなく、適正な業務の実施となるよう、共通して実施することが望ましいと考えられる最小限の内容を示そうとするものである。
  • したがって、提供されるサービスの内容等がガイドラインにより拘束的なものとなることは本意ではなく、事業者によって、より質の高いサービスが提供されることを期待するものである。

つまり、ガイドラインの内容は、インスペクションサービスを提供する事業者としては、最低限、クリアすべき基準だということです。

「既存住宅インスペクション・ガイドライン」の目次は以下のようになっています。


「既存住宅インスペクション・ガイドライン」の目次

  • 1 ガイドライン策定の目的と考え方
    • 1.1 ガイドライン策定の背景・目的
    • 1.2 ガイドライン策定に当たっての基本的な考え方・趣旨
  • 2 既存住宅現況検査の適正な実施について
    • 2.1 既存住宅現況検査の内容
      • (1) 基本的な考え方
      • (2) 検査項目
      • (3) 検査方法
    • 2.2 既存住宅現況検査の手順
      • (1) 業務受託時の契約内容等の説明等
      • (2) 現況検査の実施・記録
      • (3) 検査結果報告書の作成・報告
    • 2.3 検査人
    • 2.4 公正な業務実施のために遵守すべき事項
    • 2.5 情報の開示等
住宅のイメージ

検査業務の「客観性や中立性」
~ 依頼者にとって重要なポイント【その1】

「既存住宅インスペクション・ガイドライン 」には、

ここでは、客観性や中立性等が確保された公正な検査業務の実施を図る観点から、検査事業者及び検査人が遵守すべきと考えられる事項を示す。

という文章からはじまる、『2.4 公正な業務実施のために遵守すべき事項』という項目があります。

依頼者が住宅診断(インスペクション)を実施する意図は、当事者ではない第三者の専門家の視点から、対象物件を客観的に見た際、不具合箇所があるのかないのかを調査してもらうことです。

前提条件として、検査業務の「客観性や中立性」が担保されていることが必要です。

この、当然であるはずの「客観性や中立性」について、あえて、『2.4 公正な業務実施のために遵守すべき事項』という項目があるということは、裏を返すと「客観性や中立性等が確保されていない」検査業務が存在するということになります。

検査に「客観性や中立性」が保たれていなければ、検査自体の意味がなくなってしまいます。

よって、一般の依頼者としては、検査業務の「客観性や中立性」が担保されていることは、費用の多寡以上に重要事項になります。

2.4 公正な業務実施のために遵守すべき事項

ここでは、客観性や中立性等が確保された公正な検査業務の実施を図る観点から、検査事業者及び検査人が遵守すべきと考えられる事項を示す。

関係法令の遵守
関係法令を遵守すること。
客観性・中立性の確保
客観的、誠実に取り組み、公正なインスペクション業務の実施に努めること。
検査結果の報告に当たっては客観的な報告に努め、事実と相違する内容の報告を行わないこと。また、リフォーム工事費の目安等に関する情報を提供する場合には、検査結果の報告書とは別であることを明らかにすること。
宅地建物取引業又は建設業若しくはリフォーム業を営んでいる場合は、その旨を明らかにすること。
インスペクション業務を受託しようとする住宅において、媒介業務やリフォーム工事を受託している又は受託しようとしている場合は、依頼主に対してその旨を明らかにすること。
対象住宅の売主、媒介する宅地建物取引業者又はリフォーム工事を請け負う建設業者等との資本関係がある場合は、依頼主に対してその旨を明らかにすること。
自らが売主となる住宅についてはインスペクション業務を実施しないこと。
複数の者から同時に同一の住宅についてインスペクション業務を受託する場合には依頼主の承諾を得ることとし、依頼主の承諾なく依頼主以外の者からインスペクション業務に係る報酬を受け取らないこと。
住宅の流通、リフォーム等に関わる事業者から、インスペクション業務の実施に関し、謝礼等の金銭的利益の提供や中立性を損なうおそれのある便宜的供与を受けないこと。
インスペクション業務の実施に関し、依頼主の紹介や依頼主への推薦等を受けたことに対する謝礼等を提供しないこと。
住宅の売買契約やリフォーム工事の請負契約を締結しない旨の意思を表示した者に対して、これらの契約の締結について勧誘しないこと。
広告・勧誘の適正化
虚偽・誇大な広告を行わないこと。また、依頼主に誤解させ、又は誤解を与えるような勧誘を行わないこと。
守秘義務
検査結果及び依頼主に関する情報を依頼主の承諾なく情報提供や公開をしてはならないこと。
住宅のイメージ

住宅診断は「万能ではない」こと
~ 依頼者にとって重要なポイント【その2】

依頼者は、「既存住宅インスペクション・ガイドライン 」準拠の住宅診断(インスペクション)が万能ではないことを知っておくことも重要です。

ガイドラインには、以下の説明があります。

現況検査の内容は、売買の対象となる住宅について、基礎、外壁等の住宅の部位毎に生じているひび割れ、欠損といった劣化事象及び不具合事象(以下「劣化事象等」という。)の状況を、目視を中心とした非破壊調査により把握し、その調査・検査結果を依頼主に対し報告することである。

「既存住宅インスペクション・ガイドライン 」が想定している検査は、目視が基本です。

たとえば、壁の中がどうなっているのか、不具合があるかどうかまでは、正確にはわかりません。

たとえば、私たちの健康診断で、胃の中を見る内視鏡(胃カメラ)を使うような直接見る検査は、基本、範囲外だからです。


また、以下の説明もあります。

現況検査には次の内容を含むことを要しない。
劣化事象等が建物の構造的な欠陥によるものか否か、欠陥とした場合の要因が何かといった瑕疵の有無を判定すること
耐震性や省エネ性等の住宅にかかる個別の性能項目について当該住宅が保有する性能の程度を判定すること
現行建築基準関係規定への違反の有無を判定すること
設計図書との照合を行うこと

つまり、「診断」はするけれども「判断」はしないというのが基本ということです。

依頼者としては、専門家の見地から、診断の結果、「問題あるのかないのか」「このままで大丈夫なのかマズイのか」を知りたいところです。

しかし「診断」結果のみ報告されることが基本なのです。

場合によっては、インスペクターが、診断結果についての個人的見解を説明してくれるかもしれませんが、あくまでも担当者の善意であって、本来の業務範囲外になります。

診断結果に基づき、最終判断をするのは依頼者です。

これは、2018年4月からの改正宅建業法による「建物状況調査」でも同様です。


こういった「既存住宅インスペクション・ガイドライン 」準拠の住宅診断の限界を、依頼者が事前に理解しておくことは重要です。

たとえば、依頼者が、屋根裏や床下に瑕疵があるかないかを見てほしいと考えていても、「既存住宅インスペクション・ガイドライン 」準拠の住宅診断だけでは、点検口などから目視によって見える範囲のみの診断しかしてもらえません。

たとえば、壁の中の断熱材に不具合があるかどうかについても同様です。

それでも、「既存住宅インスペクション・ガイドライン 」には準拠していることになります。

仮に、追加で費用がかかっても、「既存住宅インスペクション・ガイドライン 」準拠の検査より、さらに詳しい住宅の検査をしてほしいなら、そういった、オプションサービス提供している民間事業者を、積極的に選ぶ必要があります。

たとえば、屋根裏や床下に潜って確認したり、ファイバースコープその他の専用機材を使用する検査などを提供している診断業者もあります。

住宅のイメージ

今回は、国土交通省が示した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」について、依頼者の立場で、特に確認・認識しておくべきポイントについて取り上げました。

あらためて、「住宅診断」「住宅のインスペクション」と呼ばれるサービスの概要を知るには、「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を確認されることをおすすめします。


ちなみに、2018年4月からの改正宅建業法による「建物状況調査」については、購入検討者用のリーフレットが用意されています

建物状況調査制度概要リーフレット 購入検討者用(PDF)
建物状況調査(インスペクション)を活用しませんか?

しかし「建物状況調査」についても、このリーフレットだけでは概要しかわかりません。

「建物状況調査」についても、下記などの事業者向けの資料やWEBサイトが、一般の方にも参考になります。


「住宅診断」「住宅のインスペクション」は、第三者的な立場から、公平、公正、中立、客観的な建物診断をすることですが、基本的には、診断結果は得られても、判断結果は得られません。

ただ、個人的には、物件の購入者側が費用を負担して実施するた住宅診断では、ただ、中立的な診断結果を手に入れるだけでは、物足りないなあとも思います。(^^)

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