住宅を購入するのは大変です。
とてもエネルギーが必要です。時間もかかります。考えなければならないことがたくさんあります。
一方で、理想の住まいを確保するのは、日々の生活基盤を確保するという意味で、とても大切なこと。
日々の生活基盤がしっかりすることは、精神的な安らぎも得られ、豊かな人生の基盤がしっかりすることでもあると言えるかもしれません。
だから人々は「持ち家を持つ」「住宅を購入する」のだと思います。
ところで、医療、金融、住宅など、専門性の高い分野には『情報の非対称性(※)』があると言われます。
住宅の分野では、住宅の「作り手」と「住まい手」、あるいは、住宅を販売する「売り手」と住宅を購入する「買い手」との間に『情報の非対称性』があります。
たとえば住宅の売買における「売り手」は、「買い手」より取引対象の物件に関する詳細な知識や情報を持ち、圧倒的に有利な立場にあります。
このような『情報の非対称性』の大きい住宅購入の取引において、一般の買主が売主(または仲介業者)と対等に渡り合うのは、容易ではありません。(^^;
今回は住宅の売買において、情報弱者である「買い手」が、より満足度の高い住宅を購入するための一つの方策を提案する内容です。
結論を先に言うと「住宅購入に関連する第三者の専門家のサポート受ける」という選択肢についてです。
ここで言う第三者とは、とくに売主側と利害関係の無い立場を意味します。
よくある無料相談などではなく、買主のためだけに仕事をしてくれる、専門業者の有料サービスを想定しています。
客観的な診断や調査、相談やサポートを本業とする、第三者的立場の専門家による有料サービスです。
住宅購入時の3つの『情報の非対称性』
住宅購入における『情報の非対称性』は、例えば大きく3つ挙げられます。
- 住宅購入時の3つの『情報の非対称性』
- 【情報の非対称性1】対象物件(建物・土地)そのものの『物的状況』
- 【情報の非対称性2】不動産に関する「法的規制」「権利関係」「契約」などの『法律面』
- 【情報の非対称性3】購入に伴う「住宅ローン」「税金」「保険」などの『金融面』
【情報の非対称性1】の対象物件(建物・土地)そのものについては言うに及びません。
それ以上に、そもそも【情報の非対称性2】や【【情報の非対称性3】があると思います。
特に、不動産や建築関連の法律や税制は、社会状況の変化に応じ、随時改正されています。
たとえば、一般の方より不動産(土地・建物)に詳しい専門家である「宅地建物取引士」でも、最新の不動産や建築関連の法律や税制などを完全に把握するのは容易ではありません。
改正された最新の法規制などを、その背景や趣旨、目的などとともに随時理解するには、相当の努力が必要です。
なおさら、一般の方が、それらを理解し知識として蓄えるのは容易ではありません。
実際の売買契約時には、仲介業者(宅地建物取引士)が取引をサポートしてくれますが、彼らの役割はあくまでも「売り手(売主)」と「買い手(買主)」の取引がスムーズに行われるよう取次ぎをすることです。
顧客の立場に立った、代理人的なサポートをするわけではありません。
仲介業者(宅地建物取引士)として、依頼者(買主)と交わした媒介契約書に記載されている内容だけをビジネスライクに遂行するのが基本です。
もちろん、コンサルティング業務でもないので、対象物件(建物・土地)についての是非の判断はしません。
しかも、仲介業者(宅地建物取引士)には、建築の知識は求められていませんので、一般的には建物に詳しくありません。(^^;
こういった状況をあらためて考えると、一般の方が住宅購入をする際には、いくつかのフェーズで、第三者の専門家の力を借りるという選択肢が有効だと思います。
売主や仲介業者に言われるままに住宅購入の取引を進めるのは、買い手にとっては、必ずしも良い取引になるとは限らないからです。
逆に、これほど『情報の非対称性』がある取引に、自身で丸腰で臨むのは、いろいろなリスクが大きすぎるように思いますがいかがでしょうか。
住宅購入時の5つの検討項目
私が個人的に考える「住宅購入時の検討項目」には、大きく下記の5つくらいのポイントがあると思います。
- 住宅購入時の検討項目
- 【1】物件の物理的状況・法律的状況
- 【2】売買契約や請負契約などの契約の内容
- 【3】ローン・税金・保険の内容
- 【4】収入の確保と家計の将来予測
- 【5】長期的視点から考える物件のロケーション
これらのうち【1】~【3】は、上記の【情報の非対称性1~3】に対応しています。
本来、少なくとも検討項目【1】~【3】については、各分野の専門家のアドバイスを受けたいところです。
予備知識のない一般の方が、これら3つの分野について理解し判断するのは、容易ではないからです。
ところが、ほとんどの住宅購入の場面では、売主や仲介業者の言われるがままの情報をに基づき、購入者は自身の知見のみで判断し、住宅購入に至っているのが現実ではないでしょうか。
しかし、住宅(土地+建物)は買い替えることが容易ではない高額な不動産です。
購入においては、より慎重に、第三者の専門家による客観的な情報を踏まえて最終判断をしたほうが、事前にさまざまなリスクを知ることにつながり、結果的により良い住宅を手にいれられる可能性が高くなると思います。
住宅購入時に専門家のサポートを受けること
では、上記の「住宅購入時の検討項目」の各項目について、どんな専門家に相談したらよいでしょうか。
概要を一覧にすると、下記のようになります。
住宅購入時に相談する専門家の例
住宅購入時の検討項目 |
相談する専門家の例 |
【1】物件の物理的状況・法律的状況 |
- 住宅診断業者
- 住宅相談業者
- 建築士
- 不動産コンサルタント
- 地盤調査業者
など
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【2】売買契約や請負契約などの契約の内容 |
など。
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【3】ローン・税金・保険の内容 |
- 相談専門のFP(ファイナンシャルプランナー)
- 住宅ローンアドバイザー
- 税理士
など。
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【4】収入の確保と家計の将来予測 |
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【5】長期的視点から考える物件のロケーション |
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たとえ有料であっても、各分野について、第三者の専門家のサポートを受けたほうが、総合的には、より満足度の高い住宅を手に入れることにつながると思います。
一方、無料のサービスや格安のサービスには注意が必要です。
たとえば、よくある無料相談は、相談者最優先の相談内容にならないケースがあるからです。
顧客から相談料を受け取らないなら、別のどこかから費用を受け取っている可能性があります。
別のどこかから費用を受け取るために、相談内容に制約やバイアスがあり、真に相談者のためにならない可能性があるからです。
自身で検討するしかない項目
もちろん、すべての「住宅購入時の検討項目」の最終判断は本人です。
特に【住宅購入の検討項目4・5】については、個人的な状況や価値観に関連するので、より主体的に本人が決める以外にありません。
- 【住宅購入の検討項目4】収入の確保と家計の将来予測
- 【住宅購入の検討項目5】長期的視点から考える物件のロケーション
【住宅購入の検討項目4】のうちの「家計の将来予測」については、相談専門のFP(ファイナンシャルプランナー)に相談できますが、収入をどう増やすかなどは、個人的な事情です。
また【住宅購入の検討項目5】も同様です。
物件の立地は、個人的事情や生活環境に求める優先順位など購入者の価値観によって変わるからです。
たとえば、少子高齢化・人口減少時代の今日では、住宅(建物+土地)の資産価値を維持できる立地は、都市部などごく一部の場所に限られます。
よって、長期的視点から住宅(建物+土地)の経済的側面を重視するなら、物件の立地エリアの人口動態や雇用状況などについてのエリアマーケティングが必要になるでしょう。
ただ、エリアマーケティングは、コンビニの出店戦略を担当する部門などが担うような、高度な専門分野です。
相談できる専門家もなかなか見当たりません(^^;
しかし、物件のロケーションは、今後ますます土地の資産価値を左右する重要な項目です。
相談できる専門家が見当たらなければ、自身で調査し判断するしかありません。
さらに、物件のロケーションについては、自然災害のリスクも考慮しなければなりません。
物件の売買契約時に仲介業者(宅地建物取引士)が説明する重要事項説明(※)には、「造成宅地防災区域」「土砂災害警戒区域」「津波災害警戒区域」の3つの区域に該当するかどうかについての言及はあります。
- 造成宅地防災区域:宅地造成に伴う災害で相当数の居住者その他の者に危害を生ずるものの発生の恐れが大きい一団の宅地造成(宅地造成工事規制区域の土地を除く)の区域。
- 土砂災害警戒区域:急傾斜地の崩壊、地滑り、土石流など土砂災害のおそれのある区域。
- 津波災害警戒区域:津波が発生した場合に、住民等の生命・身体に危害が生ずるおそれがある区域で、津波災害を防止するために『警戒避難体制を特に整備すべき区域』)。
しかし、たとえば「洪水浸水想定区域」「大規模盛土造成地」などについては、一般的には言及されません。
- 洪水浸水想定区域:河川の氾濫(洪水)、大雨(内水)や高潮による浸水が想定される区域。
- 大規模盛土造成地:大きな地震の際に、地盤が影響を受ける可能性がある。
昨今、台風やゲリラ豪雨時による浸水、大きな地震時の液状化などで被害を受けたエリアは、「洪水浸水想定区域」や「大規模盛土造成地」に該当していたケースが多々あります。
対象物件がこれらの区域などに該当するかどうかは、購入者にとっては重要事項といえるでしょう。
ただし、これらの区域に該当していないから安心ともならないことには注意が必要です。すべての危険個所が行政によって指定されているとは限らないからです。
たとえば「洪水浸水想定区域」は一定の規模以上の河川が対象で、中小河川では浸水想定区域が計算されず、ハザードマップ内で表示されていない場合があるので、区域に該当していないから浸水リスクがないとはなりません。
よって、下記のハザードマップなどを参考にするのはもちろん、過去に被害が起きたことがあるかなどは、自身で、近隣や役所などでヒアリングすることも必要です。
今回の内容は、有料でも「住宅購入時には第三者の専門家に相談する」という選択を強くおすすめしたいという内容でした。
例えば、どうも体調がすぐれなければ、医者に診てもらいます。
資産運用する際には、FP(ファイナンシャルプランナー)のアドバイスを受ける方法があります。
同様に「住宅を購入する」際にも、自身だけですべてを決めるのではなく、専門家のサポートを受けるという選択があります。
でも、根本的には、購入者自身がより慎重に住宅購入に臨み関連知識を増やす覚悟が第一に必要です。
その上で、自分だけでは気づかないポイントや第三者の客観的なアドバイスも参考に、最終決定をするのが良いと思います。
「マッキンゼーが予測する未来/ダイヤモンド社」という本には、現代社会が「都市化」「技術革新」「人口動態(高齢社会)」「グローバル化」という、破壊的な力をもつ4つのトレンドによって劇的に変化しつつある。企業や国家は、そういう社会状況に応じて、新たな戦略や政策が必要とされる。
- 都市化
- 技術革新
- 人口動態(高齢社会)
- グローバル化
というようなことが書かれていますが、これは企業や国家だけでなく、個人にもあてはまるはずです。
特に日本は、総人口において65歳以上の人口の割合(高齢化率)が21%を超える「超高齢社会(※)」という側面もあります。
つまり、これからの「住宅購入」では、もともと存在する『情報の非対称性』に加え、ますます予測の難しい将来を考慮しながら、多くの難しい選択をしなければなりません。
そのためには、買主側にも、時代の変化に応じた新たな「住宅購入の戦略や方策」が必要だと思います。(^^)