平成30年4月1日から国土交通省がすすめている「安心R住宅」がスタートします。(※2019年現在スタートしています。)
また、個別に、優良な中古住宅を認定する制度や中古住宅の購入者が安心できるサポートサービスを実施している都道府県もあります。
こういった動きの中で、「安心(あんしん)な既存住宅」だと宣言してしまうことが、個人的には少し気に掛かっています。
既存住宅(中古住宅)の購入者が、安心 = 安全 だと誤解するのではないか。さらに「油断」していまわないかと気になるのです。
国や公的機関が関与する制度で「安心」だと謳われていれば、消費者は相当程度「安心」してしまうと思います。
既存住宅(中古住宅)が安心だと公的に認定されているなら、消費者にとっては、とてもありがたいことです。
でも、手放しで「安心」はできないこと、「安全」だと言っているわけではないことに、私たち購入者は注意しなければなりません。
「安心」とされている内容は具体的に何なのか、冷静に確認しておく必要があります。
その上で、それとは別に、住宅購入において一般的にチェックしておくべき基本事項を、やはり一つ一つ丁寧に確認しておくことを怠ってはならないと思います。
そもそも、住宅 = 土地+建物 です。
既存住宅(中古住宅)を購入する際、事前に建物の調査が実施され問題がないことが確認できていれば、もちろん良いことです。
でも、建物の調査結果がOKというだけでは安全は語れません。まして安心とは言えないはずです。
この基本事項だけでも購入者は再認識しておく必要があると思います。
主観的な「安心」と客観的な「安全」
「安心」は個人の主観によって内容に幅がある抽象的な言葉です。
「安全」は客観的な基準に基づく具体的な意味を含む言葉です。
たとえば、住宅の耐震性が一定の「安全」基準をクリアしているとしても、「安心」かどうかは、人によって違うことがあります。
本来「安心≠安全」なのですが、「安心」と「安全」は混同されやすい言葉です。
「安心な既存住宅(中古住宅)」とあえて「安心な」と付けるのは、購入時に「建物の不具合については不安や心配がいらない既存住宅(中古住宅)」という意味だと思いますが、仮にそうだとしても、「安心な既存住宅(中古住宅)」だと言い切ってしまうことは、少々「安易」ではないかという気がしています(^^;
「安心な既存住宅(中古住宅)」だと明記された際、謳う側と受け取る側とで、安全についての認識にギャップが生まれる懸念があります。
たとえ「安心」と明記された中古住宅(既存住宅)でも、自分にとっては「安心」できない可能性があるという認識を持つ必要があります。そして、その
「安心」の中身を吟味しておく必要があります。
何について「安心」なのか。「安心」の対象は何なのか。「安心」の範囲はどこまでなのか。その「安心」に前提条件はあるのかなど。
一口に「安心」な住宅だといっても、様々な観点があるからです。
仮に、住宅(土地+建物)の建物が「安心」だとします。
そうだとしても、建物の耐震性能について「安心」なのか。耐火性能について「安心」なのか。
様々なポイントがあり、建物が「安心」だというだけでは「安心」の中身は漠然としたままだからです。
「安心な既存住宅」の安心の中身を確認する
安心(あんしん)を冠する既存住宅(中古住宅)やその制度は、事前に「安心」の中身をよく確認しておくことが重要です。
理由は、それらの既存住宅(中古住宅)や制度が保証している「安心」の中身と、自分の「安心」の基準にギャップがあるかもしれないからです。
もしギャップがある場合、その隔たりを見直す過程で、購入物件の選択や、購入後のリフォーム計画が変わる可能性があるからです。
安心R住宅
中古住宅(既存住宅)の流通促進を目的に、平成30年4月1日からスタートする(※2019年現在スタートしています。)「安心R住宅」の取り組みは、中古住宅購入者にとっては大変意義のある取り組みです。
購入前に、基本的な建物の検査がなされていて、瑕疵保険もすぐ付けられる状態だという証明になるからです。
よって「安心R住宅」ではない中古住宅(既存住宅)よりは、少しは不安や購入リスクは軽減されるとは思います。
ただし、建物の調査のみです。土地の調査はありません。
「安心R住宅」でも、手放しで「安心」はできないことを、購入者は冷静に認識しておく必要があると思います。
「安心R住宅」であっても、別途、住宅購入において一般的に押さえておくべき基本事項のチェックをしたら、人によっては、必ずしも「安心」だと言い切れないケースもあります。
例えば、耐震性はどうでしょうか?
「安心R住宅」の耐震性
「安心R住宅」がクリアすべき耐震基準は、新耐震基準です。2000年基準ではありません。
2000年(平成12年)からスタートした「住宅の品質確保の促進等に関する法律」による「耐震等級3」が安心だと考える方には、「安心R住宅」の耐震性では安心とは言えません。
そうでなくても、熊本地震の被害状況の知見から、2000年基準以前の新耐震基準の住宅、つまり、1981年6月~2000年5月(昭和56年6月~平成12年5月)頃に建てられた木造住宅の耐震性には懸念があるということで、該当する住宅の所有者に向け、国土交通省は耐震性の検証を推奨しています。
また例えば、既存住宅売買瑕疵保険が付保できる状態だから安心だと言えるのでしょうか?
既存住宅売買瑕疵保険が付保できる状態の「安心R住宅」
既存住宅売買瑕疵保険は、保険期間5年間または1年間の期間において、下記の部分のみが補償対象です。
- 1.構造耐力上主要な部分
- 2.雨水の浸入を防止する部分
- 3.給排水管路※
- 4.給排水設備・電気設備※
(※)基本は1と2が補償対象。給排水管路、給排水設備・電気設備については、保険法人によっては対象外。
地震や台風、土砂崩れなどの自然災害やシロアリ被害、建物の劣化等が原因の場合は保険の対象外です。
軟弱地盤に起因する建物の不具合も保険の対象外になる可能性があります。
兵庫県/ひょうごあんしん既存住宅表示制度
建物の基本診断をします。
シロアリ被害の調査もあります。2000年基準での耐震性能の有無もチェックされるようです。
ただ建物の調査のみです。
建物状況調査(インスペクション)の結果が「ひょうごインスペクション」の基準に適合していれば「ひょうごあんしん既存住宅」と表示するようです。
中古住宅あんしんパック | 静岡不動産流通活性化協議会
こちらは「安心な中古住宅(既存住宅)」とは宣言はしません。
中古住宅売買時に、一括して物件の検査や調査のサービスをサポートをすることが主旨だからです。
「中古住宅あんしんパック」のサービスでは、建物の基本診断をします。
シロアリ被害の調査もあります。
さらに、地盤状況、地中残存物、土壌汚染などの土地の調査もあります。
土地の調査もあるので、購入者としては「安心度」はより高くなります。
中古住宅(既存住宅)物件の購入者としては、安心(あんしん)という言葉に「油断」しないことが重要です(^^)
安心(あんしん)を冠する既存住宅(中古住宅)や制度によって認定された物件であっても、あくまでも、一つの安心材料くらいの捉え方が良いと、個人的には思います。
本当に納得のいく物件の購入を目指すなら、安心(あんしん)という言葉は一旦忘れて、別途自分なりにいろいろ調査し検討した上で、物件を購入されることをおすすめします。
場合によっては、実施時期はともあれ、さらに外部の専門家による耐震診断やその他の目的に応じた別の住宅診断を検討されることをおすすめします。
そのほうが、より自分の価値観や理想に合った物件を手に入れることにつながるはずです。
- 「安心R住宅」でも油断しない物件購入検討プロセスの例(^^)
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立地も建物も価格も気に入った「安心R住宅」物件が見つかったとします。
その物件について、別途個人的に調べると、耐震基準は新耐震基準だけど2000年基準ではないことがわかりました。
大規模盛土造成地マップを見たら、土地が軟弱地盤かもしれないことが判明したとします。
でも、立地も建物も価格も気に入っています。ん~どうしよう。
耐震性能が少し不安だから、耐震リフォームをしてから、住むことしようかな。
購入時のローンは、耐震リフォームの予算も考慮してリフォーム一体型のローンを検討しよう。
さらに調べると、その物件のエリアは、木造住宅密集地域であることも判明。
ん~そうだな、リフォーム時には、窓やドアや外装は、より耐火性能・防火性能がアップするようなリフォームも考えておこうかな。
というような購入プランもあり得ます。