住宅診断関連の資格は、いくつもあってわかりにくいと思います。
みなそう思っています。(^^;
業界関係者もそう感じているかもしれません。
今回は、おもに中古住宅(既存住宅)の流通に関連する住宅診断の資格について取り上げてみます。
- 既存住宅状況調査技術者
- フラット35(中古住宅)適合証明技術者
- 木造住宅耐震診断技術者(都道府県)
- 長期優良住宅リフォーム推進事業対応インスペクション関連資格
- 登録インスペクター資格(主な資格のみ)
- 北海道住宅検査人
- 住宅インスペクター
- 既存住宅現況検査技術者
- ホームインスペクター
- 木住協リフォーム診断員
- ハウスインスペクター
- プレハブ建築協会 既存住宅インスペクション技術者
- 木材劣化診断士
- 建築士会インスペクター
- JSHI公認ホームインスペクター
近年の日本の住宅市場では、平成18年(2006年)6月8日に公布・施行された「住生活基本法」に基づく「住生活基本計画」などによって、日本の住宅政策が「量から質へ」という転換がはかられ、それ以降その方針に基づいた政策がすすめられてきました。
直近の基本方針としては、平成28年(2016年)3月に閣議決定された「住生活基本計画(全国計画)」にて掲げられた「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」をめざす方針があります。
「既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けた取組み」として下記にまとめられています。
ここで取り上げる資格は、「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」をめざす国の方針に沿った、既存住宅流通市場の整備に欠かせないインスぺクション資格です。
【保有資格要件】建築士(1級・2級・木造)
既存住宅状況調査技術者
まず何といっても、今後の住宅診断資格のスタンダードのひとつは「既存住宅状況調査技術者」です。
平成28年3月に閣議決定された「住生活基本計画(全国計画)」では、既存住宅流通・リフォーム市場を活性化させることが掲げられました。
その既存住宅流通市場に欠かせない建物状況調査(インスペクション)の担い手として、国がいま最も力を注いでいる資格が「既存住宅状況調査技術者」です。
また、既存住宅売買瑕疵保険を付保するためのインスペクションでは、従来「既存住宅現況検査技術者」が担っていましたが、それに加え、今後は「既存住宅状況調査技術者」が担っていくようです。
さらに、長期優良住宅リフォーム推進事業対応のインスペクション資格としても、現在は「既存住宅状況調査技術者」が指定されています。
2018年4月からスタートする宅地建物取引業法改正や「安心R住宅」認定の際のインスペクションはもちろん、既存住宅売買瑕疵保険のインスペクションや長期優良住宅リフォーム推進事業対応のインスペクションでも「既存住宅状況調査技術者」が指定されているところを見る限り、今後の日本の既存住宅流通・リフォーム市場における、公的な住宅診断資格のスタンダードは「既存住宅状況調査技術者」に集約されていくようです。
「既存住宅状況調査技術者」が担うインスペクション例
- 2018年4月からスタートの宅地建物取引業法改正にともなうインスペクション(建物状況調査)
- 2018年4月からスタートの安心R住宅の認定にともなうインスペクション(建物状況調査)
- 既存住宅売買瑕疵保険を付保するためのインスペクション
- 長期優良住宅リフォーム推進事業対応のインスペクション
【保有資格要件】建築士(1級・2級・木造)
フラット35(中古住宅)適合証明技術者
適合証明技術者は、中古住宅や中古マンションの購入やリフォーム工事の際に【フラット35】をご利用する場合の物件検査(適合証明業務)を行い適合証明書を発行することができる資格です。
中古住宅や中古マンションの購入およびリフォーム工事の際に【フラット35】をご利用する場合、購入物件が住宅金融支援機構の定める技術基準に適合していることについて、適合証明検査機関(※1)または適合証明技術者(※2)による適合証明(物件検査)を受ける必要があります。
新築住宅の場合は適合証明検査機関のみですが、中古住宅の購入または中古住宅のリフォームの場合は適合証明検査機関のほか、適合証明技術者も適合証明書の発行が可能です。
(※1)適合証明検査機関とは、住宅金融支援機構と協定を締結している指定確認検査機関または登録住宅性能評価機関。
(※2)適合証明技術者とは、住宅金融支援機構と協定を締結している(社)日本建築士事務所協会連合会および(公社)日本建築士連合会に登録した建築士。
【保有資格要件】建築士(1級・2級・木造)
木造住宅耐震診断技術者(都道府県)
多くの自治体では、昭和56年(1981年)6月以前の旧耐震基準で建てられた木造住宅を対象に、耐震改修助成制度を実施しています。
耐震診断が無料で受けられたり、耐震改修工事(耐震リフォーム)する際に補助金の交付があります。
自治体の耐震診断技術者派遣事業や補助金を受ける際の耐震診断をするのが木造住宅耐震診断技術者です。
木造住宅耐震診断技術者は、各都道府県や建築士会が認定している耐震診断事務所および技術者です。
実際に耐震診断などを受ける際は、都道府県や市区町村など、各自治体の窓口に問い合わせしてみましょう。
長期優良住宅リフォーム推進事業対応インスペクション関連資格
長期優良住宅リフォーム推進事業とは、国が進める、住宅の性能向上リフォームや三世代同居対応リフォームに対する補助制度です。
同制度では、床下防湿や防蟻措置などの「劣化対策」、軸組み接続箇所の補強などの「耐震性アップ」、排水管・給水管・給湯管・ガス管などの「維持管理・更新の容易性の向上」、「省エネルギー性のアップ」など、いずれかの性能向上を図るリフォーム工事の費用の一部が支援されます。
そしてリフォーム工事後には、最低限、劣化対策と耐震性(新耐震基準適合など)の基準を満たすことが対象要件となります。
長期優良住宅リフォーム推進事業によってリフォームの補助金を受ける際には、リフォーム工事前のインスペクションが必要です。
長期優良住宅リフォーム推進事業に対応するインスペクション資格は、大きくは下記の2つです。
- 長期優良住宅リフォーム推進事業に対応するインスペクション資格
-
(※)登録インスペクターは、インスペクター講習団体の資格保有者全員ではありません。
インスペクター講習団体の資格保有者のうち、一定の講習を受けた建築士か施工管理技士のみが、長期優良住宅リフォーム推進事業対応のインスペクションが可能な登録インスペクターです。
「既存住宅状況調査技術者」については上記で説明していますので、登録インスペクター(※)の資格について下記にまとめました。
インスペクター講習団体の資格
資格名 |
資格概要 |
北海道住宅検査人 |
資格の特長など
住宅診断の内容は、積雪寒冷地である北海道の木造住宅の特徴的な構工法や劣化現象を踏まえた、エリア特性も考慮した独自の調査内容のようです。 |
保有資格要件
次の①、②の要件をすべて満たす必要があります。
①建築士法に基づく建築士(一級、二級、木造)等の資格を有する者
②住宅金融支援機構の木造戸建住宅の検査・審査に係わる「適合証明技術者」の資格を有する者、又はこれと同等と認められる資格※1を有する者、もしくは既存住宅の検査の経験※2を有し検査業務に精通している者
※1同等と求められる資格
一 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく「住宅性能評価員」
二 住宅瑕疵担保責任保険協会による「既存住宅現況検査技術者」
※2検査の経験年数【講習実施機関】 |
講習機関 一般社団法人北海道建築技術協会 |
住宅インスペクター |
資格の特長など
「住宅メンテナンス診断士」の上位資格。別途「住宅メンテナンス診断士」という資格や住宅履歴情報「登録住宅いえかるて」を実施されています。住宅購入後の維持管理やメンテナンスについてのサービスも提供しているようです。 |
保有資格要件 住宅メンテナンス診断士であることが前提です。加えて一級/二級/木造建築士の免許を有する者、もしくは建築士以外の住宅分野の方で特に支援センターがその能力を認めた方 |
講習機関 一般社団法人住宅長期支援センター |
既存住宅現況検査技術者 |
資格の特長など 「既存住宅インスペクション・ガイドライン」準拠 |
保有資格要件 1級施工管理技士/2級施工管理技士(建築)/2級施工管理技士(躯体かつ仕上げの両方) |
講習機関 一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会 |
ホームインスペクター |
資格の特長など 「既存住宅インスペクション・ガイドライン」準拠 |
保有資格要件 勤務先が一般社団法人住宅管理・ストック推進協会の会員であること。
『住生活スキルマスター』資格(一般社団法人住宅管理・ストック推進協会実施)を保有していること。 |
講習機関 一般社団法人住宅管理・ストック推進協会 |
木住協リフォーム診断員 |
保有資格要件 設計または施工の実務経験が3年以上で、一級・二級・木造建築士取得済の社員がいる木住協正会員 |
講習機関 一般社団法人日本木造住宅産業協会 |
ハウスインスペクター |
資格の特長など 既存住宅かし保証保険の取扱いが可能 |
保有資格要件 一級・二級・木造建築士または1級建築施工管理技士・2級建築施工管理技士 |
講習機関 一般社団法人全日本ハウスインスペクター協会 |
プレハブ建築協会 既存住宅インスペクション技術者 |
資格の特長など
プレハブ建築協会会員の大手ハウスメーカーなどが建築した住宅は、住宅の工法や部材などの基本仕様について、あらかじめ行政の認可を一括して取得し、建物建築の手続き等を簡略化している「型式適合認定(けいしきてきごうにんてい)」工法の物件が多くあります。
これは「認定工法」とも呼ばれ、外部の建築士では性能評価ができませんので、大手ハウスメーカーなどの住宅の診断は、本資格者に任せることになるケースが多くなると思います。
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保有資格要件 プレハブ建築協会会員各社及び関連会社(販売会社・リフォーム会社・不動産会社等)に勤務し、かつ、建築士(一級建築士、二級建築士、木造建築士)又は建築施工管理技士(1級建築施工管理技士、2級施工管理技士※1)の資格を有する者であって、設計・施工・点検・リフォーム工事(事前調査を伴うもの)に関する実務経験が2年以上 |
講習機関 一般社団法人プレハブ建築協会 |
木材劣化診断士 |
資格の特長など 木材劣化診断士は、木材の生物劣化(腐朽と虫害)の診断技術の専門家。木造住宅などの維持管理や改修の際の劣化調査に役立つ劣化診断の技術を習得しているので、修理や補修に関する助言も行うようです。 |
保有資格要件 1級・2級建築士、木造建築士、木材保存士 |
公益社団法人日本木材保存協会 |
建築士会インスペクター |
資格の特長など 「既存住宅インスペクション・ガイドライン」準拠 |
保有資格要件 都道府県建築士会・建築士会連合会にて実施した「建築士会インスペクター養成講座(国土交通省インスペクションガイドラインに準拠)」を受講し、認定試験に合格した者 |
講習機関 公益社団法人建築士会連合会 |
JSHI公認ホームインスペクター |
資格の特長など 「既存住宅インスペクション・ガイドライン」準拠。2017年11月現在の合格者数2640人。WEBサイトで検索した際、JSHI公認ホームインスペクターを掲示している住宅診断業者やインスペクターが多く見られます。 |
保有資格要件 特になし |
講習機関 NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会 |
長期優良住宅リフォーム推進事業対応インスペクションで登録されているインスペクター講習団体の資格は、元々、それぞれの講習機関が独自に認定する、主に中古住宅の診断を想定した資格です。
それぞれの資格には、それぞれ独自の診断基準があり、これらの民間資格を有した診断業者では、中古住宅に限らず、新築住宅の住宅診断やマンション内覧会同行など、また地域性に応じた診断内容など、一般の住宅診断ニーズに対してより幅広いサービスを提供しています。
住宅購入時の診断サービスだけでなく購入後の維持管理の診断サービスを提供している診断業者もあります。
住宅購入者としては、これらの民間資格や診断業者にも注目されるとよいと思います。
今回は、主に中古住宅(既存住宅)の流通に関連する住宅診断の資格を取り上げました。
公的な資格では「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」の方針に基づいて、中古住宅(既存住宅)売買時やリフォーム実施時の建物調査や保険付保に関連する資格が整備されてきています。
ただ、住宅診断は、中古住宅(既存住宅)の購入時だけでなく、新築の注文住宅や新築分譲住宅の購入など、新築一戸建て住宅の購入時にも実施したほうがよいと思います。
住宅購入といえば、欧米においてはほとんどが中古住宅(既存住宅)ですが、日本においては依然として新築住宅の市場のほうがボリュームは大きいという現実があります。
そして「なぜ住宅診断が必要か|住宅診断(ホームインスペクション)ナビ」でも説明しているとおり、商品としてみた住宅の特性上、新築住宅でも不具合がある可能性は否定できないからです。
新築住宅は、まだ住んでいないという意味では、中古住宅(既存住宅)以上に、不具合のチェックができていないとも言えます。
あらためて、新築住宅購入の際にも、住宅診断をおすすめします!
新築住宅の住宅診断では、民間の資格者がすでに活躍しています。
ぜひ、当サイト(住宅診断ナビ)で住宅診断業者さんを探してみてください。(^^)