建物の安全性

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建物の安全性

「建物の安全性」で押さえておきたいのは、主に「地震などに対する強さ」「火災に対する安全性」「柱や土台などの耐久性」「防水性能(雨漏りしにくい)」などの建物の性能です。

ただし「建築部品や資材の品質」や「設計者のプランニングの配慮」「施工者の技術力」などにより決まる性能であることが多いのため、一般の購入者ではなかなか判断できません。

完成した建物では、建物の内部の構造などは、プロでも一目では判断がつきません。

建物の性能については、ハウスメーカーや工務店などがそれぞれ「強さ」や「省エネ」をうたっていても、客観性がなければ実際の内容はわかりません。

そこで、客観的な判断基準としては「住宅性能表示制度」による評価基準を目安にすることになります。

任意の制度なので、すべての住宅がこの制度による評価を受けているわけではありませんが、この制度を利用した性能表示のある住宅なら、客観的な性能がわかります。

一方、建物の外観や間取りの特徴から、特に耐震性や雨漏りなどに注意すべき形状があります。

これは見た目の話なので、一般の購入者でも、注意すべきケースがわかります。

ズバリ、外観のバランスが良い住宅(マンション)は耐震性や強く、見た目のバランスが良くない住宅(マンション)は耐震性が弱いことがあるという点。また、住宅では間取りの特徴。さらに、屋根形状が複雑な場合や、軒ゼロ住宅は雨漏りに弱い点など、建物の見る際の注目すべきポイントがあります。

住宅性能表示制度

住宅性能表示制度は2000年10月からスタート(中古住宅は2002年12月から)した「良質な住宅」かどうかをチェックする第三者評価の制度です。

「地震に対する強さ」をはじめ、「火災に対する安全性」「柱や土台などの耐久性」「省エネルギー対策」「配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策(維持管理・更新への配慮)」など、新築住宅では10分野、既存住宅(中古住宅)では9分野について、 住まいの性能を等級や数値で表示する制度です。

国土交通省の認定を受けた「指定住宅性能評価機関」によってチェックされ、評価結果は、現況検査・評価書(住宅品確法上の建設住宅性能評価書に該当します)に示されます。

評価員は、不動産売買やリフォーム工事の当事者ではない第三者なので、客観的な評価であることも安心です。

例えば、新築なら、しっかりした設計プランになっているか、その設計プランに基づきしっかり施工されているかと、「設計段階のチェック」と「建設工事・完成段階のチェック」の2段階にわけてチェックされます。

その他にも、住宅性能表示制度を利用している住宅では、「欠陥が見つかって紛争が生じたとき」「地震保険を掛ける際」などにおいてメリットがあるので、住宅性能表示制度を利用した住宅やマンションはおすすめです。

  • 住宅に欠陥が見つかって紛争が生じたときは、指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)に紛争処理を申請できます。紛争処理の手数料は1件あたり1万円です。
  • 地震保険料の割引を受けることができます。

ただし、注意が必要なのは、この制度は、住宅全体について1つの評価がされるわけではなく、新築住宅では10分野(必須分野は4つ)それぞれについて評価される点です。よって、耐震等級が最高ランクの3だとしても、他の分野は最高ランクとは限りません。

住宅性能表示制度とは| 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/info.html
制度のメリット | 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/merit.html

住宅性能表示制度は「新築住宅」「既存住宅(中古住宅)」それぞれあります

新築住宅

新築住宅の場合、評価を行う項目は全部で10分野あります。

  • 地震などに対する強さ
  • 火災に対する安全性
  • 柱や土台などの耐久性
  • 配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策
  • 省エネルギー対策
  • シックハウス対策・換気
  • 窓の面積
  • 遮音対策
  • 高齢者や障害者への配慮
  • 防犯対策
新築住宅の場合 | 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/shintiku/index.html
↑上記ページのイラストをクリックすると各10分野の詳細がわかります。

そのうち、以下の4分野が必須項目です。

  • 構造の安定
  • 劣化の軽減
  • 維持管理・更新への配慮
  • 温熱環境・エネルギー消費量

必須項目ではありませんが、できれば等級表示があると良いのは、「火災に対する安全性」です。

近年、大地震時のシミュレーションでは、密集市街地での地震火災、大規模火災も懸念されています。

「火災に対する安全性」の等級が高く、客観的な火災性能が強ければ、「人が安全に避難や脱出ができるようにすること」「外壁、床、屋根などが火に強く財産が守られること」などの点で配慮がされている住宅である証明になります。

既存住宅(中古住宅)

既存住宅(中古住宅)の場合、評価を行う項目は全部で9分野あります。

  • 地震などに対する強さ
  • 火災に対する安全性
  • 柱や土台などの耐久性
  • 配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策
  • 省エネルギー対策
  • シックハウス対策・換気
  • 窓の面積
  • 遮音対策
  • 高齢者や障害者への配慮
  • 防犯対策
既存住宅の場合 | 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会
https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/kizon/index.html

見た目のバランス

オーバーハングの住宅イメージ

ズバリ、見た目のバランスが良い住宅(マンション)は耐震性が強く、見た目のバランスが良くない住宅(マンション)は耐震性が弱いことがあるというテーマです。

過去の大地震における建物の倒壊被害の原因究明から、構造計算上は問題がなくても、壁の配置のバランスが悪く、耐震性が弱くなっていたというような考察もあります。

例えば、下記などは、一般の方でも想像できると思います。

  • 部材の継ぎ目の箇所は少ないほど建物が強くなる
  • 部材の継ぎ目の強度は強いほど建物が強くなる
  • 壁が多いほど建物が強くなる
  • 床面がしっかりしているほど建物が強くなる

言われてみれば、どれも物理的に納得できるポイントだと思います。

見た目から、特に、より建物の強度をチェックしたほうがよい形状の例を挙げておきます。

※下記の形状だから建物の強度が弱いということではなく、より慎重に耐震性能を確認したほうがよいという事例です。

一戸建て住宅の場合

  • 間口の狭い土地に建っている細長い住宅
  • オーバーハングのある住宅
  • 大きな窓の多い住宅
  • 重いバルコニーのある住宅
  • 大きな吹き抜けのある住宅
  • 吹き抜けと階段の位置が近い住宅
  • 平面的に凸凹の多い住宅
  • 立面的に凸凹の多い住宅
  • 木造でできた部分と鉄骨でできた部分のある住宅

マンションの場合

  • 建物が平面的にL字型のマンション
  • 建物が平面的にコの字型のマンション
  • 建物が立面的に凸凹したマンション
  • 1階部分が駐車場になったピロティ―のあるマンション
  • 1階部分がガラス面の多い店舗になったマンション

間取りの特徴
(住宅)

間取りの特徴も、建物の強度を左右するポイントになります。

これも図面やパンフレットを見れば、一般の方でもある程度わかります。

直下率

直下率のイメージ

直下率とは、1階と2階がつながっている柱と耐力壁の割合です。

構造的なバランスを評価する重要な指標の一つです。

簡単に言うと、1階の平面図と2階の平面図を見比べたとき、1階の壁の位置と2階の壁の位置が一致している割合が高いか低いかということです。

耐力壁は鉛直構面とも言われ、縦方向の荷重に対する強さを発揮する部分です。

1階と2階の壁が一致している割合が高ければ、構造的にはより強く、低ければ弱いということになります。

柱の直下率が50%を下回ると、2階の床がたわんで傾きなどが発生する事故の発生率が3倍以上になるという調査結果もあるようです。(注1)

直下率は最低でも60%は確保したほうが良いようです。

直下率は建築基準法や住宅性能表示制度にも規定がないので、少し注意したいところです。

※(注1)量産される「危ない間取り」
戸建て住宅の構造材を加工するプレカット工場にバランスの悪い「危ない間取り」の設計図が持ち込まれるケースが目立ち、多くはそのまま建設されている――。
量産される「危ない間取り」|日経アーキテクチュア

吹き抜けは注意

吹き抜けのイメージ

一般的に、2階の床面がしっかりしていると、住宅全体の構造的な強度は高くなります。

床面は床構面や水平構面とも言われ、横方向の荷重に対する強さを発揮する部分です。

この床面がしっかりしていれば、1階部分でモノコック構造になり、2階部分でモノコック構造になるので、建物全体の強度が強くなることは想像できます。

この床面に、例えば大きな吹き抜けがあると、建物全体の強度という観点からは、不利になります。

さらに、1階と2階をつなぐ階段も一種の吹き抜けになります。

できれば、玄関やリビングの吹き抜けと階段の位置は、離れていたほうが良いです。

位置が近いと、建物全体の強度という観点からは、不利になります。

屋根形状など
(住宅)

屋根形状が複雑な場合や逆にフラットな屋根の場合、軒ゼロ住宅は、雨漏りのリスクが大きくなります。

また、天窓(トップライト)・ドーマー・煙突など屋根に穴をあけて施工された突起物がある場合やバルコニーがある住宅も、施工次第で雨漏りのリスクが大きくなります。

「雨漏り」は、例えば、社団法人 日本建築家協会関東甲信越支部の20年以上におよぶ建築相談室の統計からも「欠陥住宅のよくある不具合」として挙げられています。

欠陥住宅のよくある不具合
  • 1.ひび割れ
  • 2.雨漏り
  • 3.不具合全般
  • 4.振動
  • 5.水漏れ

「複雑な屋根形状」「片流れ屋根」「陸屋根(りくやね)」の家は注意

屋根が片流れの住宅のイメージ

屋根が複雑な形状をしている場合、屋根の継ぎ目箇所、屋根と壁の継ぎ目箇所が増えるので、雨漏りのリスクが大きくなります。

屋根形状はシンプルが良いです。

ただし、シンプルな形状でも「片流れ屋根」や「陸屋根(りくやね)」の形状は注意が必要です。

「片流れ屋根」は片流れの上側(屋根面の高い側)はそもそも軒がかぶさっていない形状なので、屋根と壁の継ぎ目部分が直接風雨にさらされ、雨漏りのリスクが大きくなります。

「陸屋根(りくやね)」はフラットな形状の屋根です。雨水がたまりやすく、水はけ・排水が弱いので、排水の工夫や防水処理がしっかりされてないと、雨漏りのリスクが大きくなります。

軒ゼロ住宅は注意

軒ゼロ住宅のイメージ

都市部に多い、軒ゼロ住宅は注意が必要です。

軒がないと、屋根と壁の継ぎ目部分が直接風雨にさらされ、雨漏りのリスクが大きくなるからです。

軒ゼロ住宅は、雨漏り発生リスクが通常の約5倍に及ぶという調査もあります。(注1)

逆に、十分な長さの軒があるだけで、雨漏りのリスクは軽減されます。

さらに、風や紫外線からも壁などが保護されやすくなります。

結果的に将来のメンテナンス費用を抑えることも期待できます。

※(注1)軒ゼロ住宅の雨漏りリスク
軒ゼロ住宅は雨漏り発生リスクが通常の約5倍に及ぶことが分かりました。
軒ゼロ住宅の雨漏りリスク、建て主にも知ってほしい|日経アーキテクチュア

天窓(トップライト)・ドーマー・煙突など屋根に穴をあけて施工された突起物がある場合

天窓(トップライト)・ドーマー・煙突など屋根に穴をあけて施工された突起物がある場合も雨漏りのリスクが大きくなります。

これも理由は簡単で、屋根とそれら突起物との継ぎ目箇所が増えるので、継ぎ目箇所の防水処理がしっかりされてないと、雨漏りのリスクが大きくなるということです。

バルコニーがある住宅

バルコニーも雨漏りのが発生しやすい箇所として注意が必要です。

バルコニーはそもそもの形状が「陸屋根(りくやね)」と同様、フラットなので、雨水の排水処理がしっかりされている必要があります。

バルコニーの素材や形状にもよりますが、特に木造住宅でバルコニーも木造で作られている場合、バルコニーの継ぎ目部分(手すり・笠木)の防水処理がしっかりされてないと、雨漏りのリスクが大きくなります。

特に1階の居室の上にバルコニーがある場合は、もしバルコニーから雨漏れすると、1階の居室にも直接影響が出ますので、注意が必要です。